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仮登記担保契約とは?条文の上をクリックすると根拠条文が見れます

 金銭債務を担保するため債務者等の不動産に代物弁済の予約,停止条件付代物弁済契約,売買予約などが為されることがありますが,これらの担保契約を「仮登記担保契約」といいます。そして債権者が仮登記担保を実行した場合に,目的の土地の価格(仮に3000万円)が債権の価格(仮に1000万円)を超えるときは,その差額(2000万円)を清算金として債務者に支払わねばならず、その清算金の支払と土地等の所有権移転登記、引渡とは同時履行の関係に立ち、債務者は清算金の支払と引き換えに移転登記,引渡を為すことを主張することが出来ます。(仮登記担保契約1.2.3条参照)

 仮登記担保権者(債権者)と設定者(債務者)との間において清算金の支払と所有権移転登記、引渡とは同時履行の関係に立つわけですが、債務者は目的不動産の債権者よりの転得者に対しても同時履行の抗弁権を主張することが出来るかという問題が生じます。転得者が債権者の清算金支払債務を重畳的債務引受したなどの特別の事由のない限り,転得者は債務者に対して清算金の支払義務があるものと解することは出来ず,同時履行の抗弁権を主張することは出来ません。

 ところが民法295条の「他人の物の占有者がその物に関して生じたる債権を有するときは,その債権の弁済を受けるまではその物を留置することが出来る」旨,規定しています。そこで土地建物の所有権が仮登記担保権の実行により移転され,さらに転売された場合の転得者と債務者との関係においても,清算金支払請求権が債権者の所有権取得と共に同一の土地建物に関するひとつの代物弁済予約より生じた債権であるから当該土地建物に関して生じた債権と考えることが出来,留置権を行使して転得者に対して明渡しを拒絶することが出来ることになります。債務者は債権者が清算金を支払ってくれるまで明渡しをしない旨,転得者に対して主張することが出来ます。なお,転得者は清算金の支払をすることによって明渡しを得られる利益があることから,債権者に代わって清算金の支払を為すことが出来ると考えられています。