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短期賃借権のついている不動産の売買は?条文の上をクリックすると根拠条文が見れます

 民法602条に定めた期間を超えない賃貸借(山林については10年,その他の土地については5年,建物については3年以内のもの)は、抵当権の設定登記の後に対抗要件を備えたものであっても,この期間内は抵当権者及び競売によって物件を買受けた者に対抗することが出来ます。立法の趣旨としては,短期の賃貸借に限って,その期間内だけは抵当権者及び競売による買受人,その承継人に対抗することを認め,もって価値権たる抵当権と用益権たる賃借権の調和を図り,抵当目的物の利用を円滑にしようとしたのです。

 しかしながら現実には,次のような利用のされ方をしていて必ずしも調和のとれた利用とはなっていないようです。それは

1.短期賃貸借が抵当目的物に設定されると,事実上その担保価値が低下するため、これを事前に防止する目的で抵当権者が自ら賃借権の登記もしくは債務不履行を停止条件とする賃借権設定仮登記を受けておいて,その後の第三者による短期賃借権を排除し,それによって抵当目的物の担保価値を確保することが広く行われています。

2.一般債権者もしくは配当の見込みのない後順位抵当権者が事実上の債権回収を図るため短期賃貸借を結んでいることがあります。短期賃借権を転貸し、又自ら利用することで債権回収に充てるものと、抵当権者もしくは買受人から賃借権登記,仮登記の抹消についての承諾料を取るとか,目的不動産の明渡しについて立退き料を請求するなどして金銭の交付を受けることを目的としていることがあります。

3.抵当権設定者が,抵当権の実行を事実上妨害する目的で知人,親類などを賃借人とする名目だけの短期賃借権の設定をするケース  

等が現実には行われていています。

 したがって短期賃貸借の付いている不動産を買受ける場合には,その賃借権が何を目的として設定されたものなのか,抵当権設定者と賃借人はどのような関係にあるのか等詳しく調査したうえで慎重に検討する必要があるといえます。