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賃貸借契約

コンテンツ「1.契約書の作成2.敷金,礼金,保証金3.特約事項4.契約の更新・解約5.修理・補修 6.家賃改訂7.更新料

8.更新のトラブルに伴う供託金9.定期借家権の活用」

1.契約書の作成

賃貸借契約は、貸主と借主の双方が意思表示を合致することで成立します。しかし,後日,双方で問題が発生した場合「云った」「云わない」と水掛論に終始することが十分に予想されます。そこで契約書には

(1)契約が成立したこと(2)どのような契約内容だったか

の2点について記録します。当事者の間で記載に誤りがなければ、署名・押印し、後日の証拠として双方で残しておくようにするのが契約書の役割です。契約書は市販されているものもありますが、賃貸住宅の仲介業務を多く手がけている不動産業者ならトラブルを防ぐため、きめ細かい条項を盛り込んだ独自の契約書式を持っています。

2.敷金,礼金,保証金

賃貸借契約をする際には、礼金、敷金、地域によっては保証金といった一定の金額が入居者から支払われます。これらは、契約が終了した時点で、入居者に返却するものと返却しなくてもいいものとに大別されます。

敷金

契約が終了するときに返すものです。入居者がもし、部屋を傷めた場合、オーナーは敷金から、その損害賠償の金額を差し引く特約ができます。ただ、入居者が家賃の支払を滞納したからといって,入居者の側から「敷金から差し引いてくれ」という主張はできないことになっています。

権利金

契約が終了しても返却しません。もともと、地代・家賃統制令で家賃が押さえられていた時代に生まれた慣行でしたが,未だに家賃の一部を一括して先取りした性格と考えられています。

礼金

契約が終了しても返却しません。いま,権利金をこの名称で呼ぶことが多いようです。

保証金

敷金のような性格があります。契約が終了した時点で返却、あるいは償却として、保証金の一定割合を差し引いて返却する場合などがあります。これらは、地域によって商慣習が異なっていますから,経営する地域の状況がどのようになっているのか,依頼する不動産業者に聞くとよいでしょう。

このほか,廊下や階段といった共用部分の電気代,清掃のための水道代などを管理費(共益費)として徴収します。

3.特約事項

アパートやマンションなど賃貸住宅についての契約は借地借家法に基づいており、「公序良俗」つまり、公益の秩序、守るべき健全な風俗・習慣に反する内容は効力がありません。また、不動産業者に仲介を依頼したときには、入居者(予定者)と契約を締結する前に重要事項について説明するよう義務付けています。トラブルを未然に防ぐため取引主任者が入居者に手付金や敷金、礼金といった金銭の性格や目的、契約の解除、違約時などの取り決め事項について文書を含めて説明するものです。これによって入居者が承諾すれば、契約に入ります。契約書の内容は,目的建物の表示(所在,家屋番号,種類,構造,床面積など),賃貸借の期間、賃料、支払方法、敷金、敷金の返却使用目的,転貸についての禁止など,違約解除、損害賠償の義務費用負担,原状回復の義務、連帯保証人などとなっています。

賃貸借契約でとかく,トラブルが起こりがちなのは

1)契約期間について

2)修繕についての費用負担

3)家賃の値上げについて

等ですから,きちんと確認するようにします。また、特約事項で退去に関する事項を定める場合があります。「結婚したら退去する」「子供ができたら退去する」などの条項です。しかし,当初から「女性向」アパートとして開業した場合を除いて、アパート経営の途中から「結婚」を理由に契約を解除することなどはできないことになっています。特約事項に「結婚したら契約を解除する」という文章があったとしても,退去を求めることは困難となります。同様に夫婦の間に子供が生まれたことを理由に退去を迫ることもできません。

4.契約の更新・解約

契約の更新・解約は、「期間の定めがある場合」と「ない場合」とで異なります。「期間の定めがある場合」には,その期間中入居者に解約を申入れることはできません。申し入れができるのは,契約が満了する前6ケ月から1年の間に限られます。

オーナーは、更新拒絶を意思表示、さらに「正当事由」がある場合に限り解約できます(法的には入居者も一方的に解約の申入れができません。)

問題はこの「正当事由」です。実際にはオーナーと入居者の事情が総合的に判断されるので,オーナー側に余程の゛事由゛がない限り解約は厳しい状況です。一方、「期間に定めがない」場合は、当事者のどちらかが、解約を申し入れないと契約はいつまでも継続されることになります。

5.修理・補修

修理・補修については,通常,契約で土台や屋根,天井などの建物の基本的な部分はオーナー、畳替えや障子,ふすまの張替え,水道のパッキン,電灯の取り替え、ガスの修理などは入居者の負担としています。

6.家賃改訂

契約で決めた家賃が土地・建物の公租公課の増額、建物の価格の変動、近隣と比較して定額の場合には、「相当額」まで変更の請求が出来ますが,この合意をめぐってのトラブルも少なくありません。これらの数々のトラブルを防ぐため、契約書にきめ細かい特約条項や管理規約をつけておくとよいでしょう。たとえば、近隣に迷惑をかけるペットの飼育の禁止、徹夜の禁止や時間規制、男子の立ち入り禁止、修理修繕の範囲,火災の危険がある石油ストーブの禁止,家賃を滞納したときの契約解除,契約更新時の家賃値上げ率,更新料などです。

借地借家法によると,家賃を値上げできる要件は次のように定められています。

1)土地や建物に対する税金その他の負担が高くなったこと

2)土地・建物の価格が高くなったこと

3)近隣の建物の家賃と比較して不相当に安くなったこと

これらのうちひとつが該当していればよく,また,これ以外の理由でも家賃が不当に安い状況になった場合には値上げできます。ただし、家賃の値上げには前回の値上げから「一定期間」の経過が必要で、半年毎や毎年の値上げは妥当ではないといえます。せいぜい2年くらいの間隔はおくべきでしょう。

7.更新料

契約が更新される場合に更新料を請求する場合があります。特に都市部では契約書に明記されている場合もあります。しかし法律的には更新料に関する規定が存在しないため,まれに入居者から支払を拒否される場合があります。

この場合強制的に立ち退きを要求することはできませんので、正当事由の存在を理由に更新を拒絶し、明渡し請求訴訟を起こし対抗することになります。しかし,正当事由による明渡し請求は困難な場合が多いため、裁判所に提訴するという姿勢を見せることにより、入居者側の紛争を避けたい気持ちからの更新料の支払に期待する程度の対抗手段となります。

8.更新のトラブルに伴う供託金

賃貸契約の解除を申入れた際などにそれに伴って家賃の受け取りを拒絶した場合,入居者が家賃を供託する場合があります。この場合供託された家賃を受け取ると更新を認めたことになりますので、通常は受け取ることはできません。しかし,家賃を受け取らないということは収入が途絶えることにつながりますのでどうしても供託金を受け取りたい場合があります。

こうした場合には,損害金として受け取る方法があります。この場合,あくまでも更新を拒絶する姿勢を明確にしたまま受け取らなければなりませんので,供託金を「損害金」として受け取ります。具体的には、まず「配達証明付内容証明郵便」で供託されている金額を「損害金として受け取る」旨通知します。その後に供託金の還付を受けます。しかし,こうしたケースでは弁護士などに相談されることをお勧めします。

9.定期借家権の活用

平成12年3月より「定期借家権」が施行されました。これにより,より安心してアパート経営を行う土壌が整ったと云えます。

特に,更新に関するトラブルは,定期借家権による契約を行うことによって,ほぼ完全に防ぐことが可能となります。