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宅建業者の取引上の注意義務とは?

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依頼者と宅建業者との仲介委託契約は準委任と考えられています。したがって,宅建業者には、その事務を善良なる管理者の注意義務をもって処理する義務(善管注意義務・民法644条)があるわけです。その善管注意義務の内容は,業者は商人として委任事務を処理した場合には当然に報酬を請求し得るという事務の有償性(商法512条)及び業者は免許という形で専門的な知識経験を有することから、通常人以上の周到な専門家を標準とする高い程度の注意義務が要求されるものとされています(東京高判昭32.7.3高民10..5.268)。ですから,業者は目的物に瑕疵(欠陥)がないか,取引の相手方が真の権利者であるかどうかなどを調査して依頼者が損害を蒙ることのないように配慮する義務を負うことになるのです。

 更に判例においても,仲介業者の注意義務として「業者としては,不動産の売買を媒介するに際しては,当該不動産を現地において調査することはもちろん,関係人への問い合わせあるいは登記簿その他の資料の調査等の方法により、不動産の公簿上の所有名義人が誰となっているか、真実の所有者が誰であるか、担保権・賃貸借等の負担が存するか否か等を確認し,更に現実に売買契約をなす者が代理人である場合においては,委任状・印鑑証明書等によってその代理権の存否あるいはその範囲を調査すべきことはもちろん,もしこれらの点について疑いがある場合には,直接本人に照会するなどの方法によってこれを明確にし,更に以上の調査結果を依頼者に報告して,依頼者に不測の損害を及ぼすことのないように注意すべき義務がある」(東京高判昭40.4.14判タ176.181)として高度の注意義務を負わせております。その他の判例においても,業者に対して,手付金受領権限の調査,目的不動産の売主の処分権限の調査,建物の売買における地主の承諾の有無の調査,目的物の瑕疵の調査,競売記録添付の有無の調査,処分禁止の仮処分の有無の調査,所有権移転請求権保全の有無の調査,都市計画法,森林法等による制限の調査,取引に関する課税の有無の調査等数え上げきらないほどのたくさんの判例があり,いずれも宅建業者の不動産取引の専門家としての高度の注意義務が要求されています。