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不動産売買契約の留意点(条文上)

不動産売買契約における主要留意点として宅地建物取引業協会が常時使用する標準契約書の各条文のうち特に大切と考えられる項目に限って条文の根拠となるところを抜粋しました。契約書の各条文の法的根拠となるべき民法等の条文を事前に理解しておくと、契約にあたって不安なく、また不本意な契約であったり,間違った契約を避ける上でも大切と考えられます

 

契約書第1条(総則)

重要事項の説明等  宅地建物取引業法第35条

 宅地建物の取引業者は、宅地もしくは建物の売買,交換、もしくは貸借の相手方、もしくは代理を依頼した者,又は宅地建物取引業者が行う媒介に関わる売買,交換もしくは貸借の各当事者に対して,その者が取得し,又は借りようとしている宅地又は建物に関し,その売買,交換又は貸借の契約が成立するまでの間に,取引主任者をして少なくとも次に掲げる事項について,これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは図面)を交付して説明をさせなければならない。

T

.当該宅地又は建物の上に存する登記された権利の種類及び内容ならびに登記名義人又は登記簿の表題部に記載された所有者の氏名(法人にあってはその名称)

 2.都市計画法,建築基準法その他の法令に基づく制限で契約内容の別に応じて政令で定めるものに関する事項の概要

 3.当該契約が建物の貸借の契約以外のものであるときは,私道に関する負担に関する事項

 4.飲用水,電気及びガスの供給並びに排水のための施設の整備の状況(これらの施設が整備されていない場合においては,その整備の見通し及びその整備についての特別の負担に関する事項)

 5.当該宅地又は建物が宅地の造成又は建築に関する工事の完了前のものであるときは,その完了時における形状,構造その他建設省令で定める事項

 52.当該宅地が建物の区分所有等に関する法律第2条第1項に規定する区分所有権の目的であるときは,当該建物を所有するための一棟の建物の敷地に関する権利の種類及び内容,同上第4項に規定する共用部分に関する規約の定め、その他の一棟の建物又はその敷地に関する権利及びこれらの管理又は使用に関する事項で契約内容の別に応じて建設省令で定めるもの

.代金,交換差金及び借賃以外に授受される金銭の額及び当該金銭の授受の目的

.契約の解除に関する事項

.損害賠償額の予定又は違約金に関する事項

.手付金を受領しようとする場合における保全措置の概要

10.支払金又は預り金を受領しようとする場合において,保証の措置その他建設省令で定める保全措置を講ずるかどうか,及びその措置を講ずる場合におけるその措置の概要

11.代金又は交換差金に関する金銭の貸借の斡旋の内容及び当該斡旋に関わる金銭の貸借が成立しないときの措置

 12.その他宅地建物取引業者の相手方の保護の必要性及び契約内容を勘案して建設省令で定める事項

 U

 宅地建物取引業者は,宅地又は建物の割賦販売の相手方に対して,その者が取得しようとする宅地または建物に関し、その割賦販売の契約が成立するまでの間に、取引主任者をして、前項各号に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明をさせなければならない。

 

  1. 現金販売価格
  2. 割賦販売価格
  3. 宅地又は建物の引渡しまでに支払う金銭の額及び賦払金の額ならびにその支払いの時期及び方法

 V

取引主任者は,前二項の説明をするときは,宅地建物取引業者の相手方に対し,取引主任者証を提示しなければならない。

 W

第一項又は第二項の書面の交付にあたっては,取引主任者は当該書面に記名押印しなければならない。

契約書第2条 (売買代金,

売買費用  民法第558条

売買契約に関する費用は当事者双方平分して之を負担す。

 数量不足,物の一部滅失の場合の担保責任   民法第565条

数量を支持して売買したる物が不足なる場合、および物の一部が契約の当時すでに滅失したる場合において、買主がその不足または滅失を知らざりしときは、代金の減額の請求又は契約の解除又は損害賠償の請求を為すことを妨げず。

 

契約書第3条(手付金)

手付  民法第557条

買主が売主に手付を交付したるときは,当事者の一方が契約の履行に着手するまでは,買主はその手付を放棄し,売主はその倍額を償還して契約の解除を為すことを得。

.解除と共にする損害賠償の規定は前項の場合には之を適用せず。

 契約書第4条(登記)

登記済証の還付  不動産登記法第60条

登記官が登記を完了したるときは,登記原因を証する書面又は申請書の副本に申請書受付の年月日、受付番号、順位番号及び登記済の旨を記載した登記所の印を押捺して之を登記権利者に還付することを要す。

中間省略登記  民法第177条(不動産物件の対抗要件) 最判昭40.9.21

,,丙と順次に所有権が移転したのに登記名義が依然として甲にある場合,丙の中間省略手続き請求を認容するには甲および乙の同意のあることを要する。

契約書第5条(引渡,所有権移転の時期)

不動産物件の対抗要件  民法第177条

不動産に関する物件の得喪及び変更は登記法の定めるところに従い,その登記をなすにあらざれば之をもって第三者に対抗することを得ず

 代金支払時期  民法第573条

売買の目的物の引渡しにつき期限あるときは代金の支払いについてもまた同一の期限を付したるものと推定す。

 代金の支払場所  民法第574条

売買の目的物の引渡しと同時に代金を支払うべきときは,その引渡しの場所において之を支払うことを要す。

 同時履行の抗弁権 民法第533条

双務契約当事者の一方は相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことを得。但し,相手方の債務が弁済期にあらざるときはこの限りにあらず。

売買の意義 民法第555条

売買は当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し,相手方がこれにその代金を払うことを約するによりてその効力を生ず。

 契約書第6条(担保責任)

用益的権利・留置権・質権がある場合の担保責任  民法第566条

売買の目的物が地上権,永小作権,地役権,留置権又は質権の目的たる場合において買主が之を知らざりしときは,之が為に契約を為したる目的を達することが出来ない場合に限り,買主は契約の解除を為すこと得。その他の場合においては損害賠償の請求のみを為すことを得。

 2.前項の規定は売買の目的物たる不動産のために存せりと称せし地役権が存せざりしときおよびその不動産につき登記したる賃貸借ありたる場合に之を準用す。

 前二項の場合において契約の解除又は損害賠償の請求は買主が事実を知りたるときより1年内に之を為すことを要す。

 担保物権がある場合の担保責任  民法第567条

売買の目的たる不動産の上に存したる先取特権又は抵当権の行使により,買主がその所有権を失いたるときはその買主は契約の解除を為すことを得。

 2.買主が出捐を為してその所有権を保存したるときは,売主に対してその出捐の償還を請求することを得。

  1. 右いづれの場合においても買主が損害を受けたるときは,その賠償を請求することを得。

 

契約書第7条(収益の帰属及び租税の負担) 契約書第8条(諸負担)              

果実の帰属,代金の利息 民法第575条

未だ引渡さざる売買の目的物が果実を生じたるときは,その果実は売主に属す。

 2.買主は引渡しの日より代金の利息を払う義務を負う。但し,代金の支払いにつき期限有るときはその期限の到来するまでは利息を払うことを要せず。

 

契約書第9条(危険負担)

危険負担―特定物に関する債権者主義 民法第534条 

特定物に関する物権の設定又は移転を以って双務契約の目的と為したる場合において,その物が債務者の責に帰すべからざる事由によりて滅失又は毀損したるときは,その滅失又は毀損は債権者の負担に帰す。

 2.不特定物に関する契約については民法第401条第2項(種類債権の特定)の規定により,その物が確定したるときより前項の規定を適用す。

 危険負担―債務者主義の原則 民法第536条

前2条に掲げたる場合を除くほか,当事者双方の責に帰すべからざる事由によりて債務を履行することが出来なくなったときは,債務者は反対給付を受ける権利を有せず。

.債権者の責に帰すべき事由によりて履行を為すことが出来なくなったときは債務者は反対給付を受ける権利を失わず。但し、自己の債務を免れたるによりて利益を得たるときは之を債権者に償還することを要す。

 

契約書第10条(手付解除)

手付  民法第557条

買主が売主に手付を交付したるときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは買主はその手付を放棄し,売主はその倍額を償還して契約の解除を為すことを得。

.民法第545条第3項(解除と共にする損害賠償)の規定は前項の場合には之を適用せず。

 

契約書第11条(契約解除)  契約書第12条(損害賠償)

履行遅滞による解除権 民法第541条

当事者の一方がその債務を履行せざるときは相手方は相当の期間を定めてその履行を催告し,若しその期間内に履行なきときは契約の解除を為すことを得。

損害賠償の範囲・相当因果関係 民法第416条 

損害賠償の請求は債務の不履行によりて通常生ずべき損害の賠償を為さしむるをもってその目的とする。

 2.特別の事情によりて生じたる損害といえども当事者がその事情を予見し、又は予見することを得べかりしときは債権者はその賠償を請求することを得。

 解除権行使の効果 民法第545条

当事者の一方がその解除権を行使したるときは各当事者はその相手方を原状に復せしめる義務を負う。但し,第三者の権利を害することを得ず。

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