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今日の判例は簡単です。「同時履行の関係にある場合には、反対給付の提供なき催告に基づく契約解除は無効」だとした最高裁の判決です。同時履行の抗弁権とは、双務契約の当事者が、相手方が弁済期にある債務を提供するまでは、自分の債務を履行しないと主張することのできる権利です。公平の観点から認められた制度です。

第533条〔同時履行の抗弁権〕

双務契約当事者の一方は相手方か其債務の履行を提供するまては自己の債務の履行を拒むことを得

但相手方の債務か弁済期に在らさるときは此限に在らす

昭和29年7月27日 最高裁第三小法廷 判決

原判決の認定したところによれば、本件売買代金30万円の支払については、昭和26年2月23日被上告人は内金として既に支払つた金8万円のほか更に金5万円を上告人に支払い、同年3月中までに、被上告人において訴外信用組合に対する上告人の債務を弁済し、抵当権設定登記の抹消を済ませた後、残代金の支払と引換に、本件建物につき、被上告人名儀に所有権移転登記を受けると共に、その明渡並に動産の引渡を受けることに話が決まり、被上告人はこの約定に基き、同年3月10日、右信用組合に対する上告人の債務金6万4000円を支払い、同月16日建物抵当権設定登記の抹消登記を済ませ(上告人が被上告人より本件売買代金の内金として、前記信用組合に対する債務弁済金を含め、合計金19万4000円の支払を受けたことは争がない)たものであるというのである。

 してみれば、本件においては、売買の残代金支払と所有権移転登記、建物明渡並に動産引渡とは同時履行の関係にあるものと言うべきであり、反対給付の提供なき上告人の右残代金支払の催告は被上告人を遅滞に陥らしめるに足らず、従つてこの催告に基づく解除は効力を生じ得ないものである。

 されば、この点に関する原判示は正当である。

弁護士中山知行