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マンションの特定の専有部分からの汚水が流れる排水管の枝管が共用部分に当たるとされた最高裁の判例です。共用部分については、区分所有者全員の共有に属することになります。区分所有者は,共用部分についても持分を有しますが,その持分の処分は専有部分の処分に従い,しかも,特殊な場合を除いて,その持分は専有部分と分離して処分することができません。区分所有者は,共有物分割の訴えを提起することもできません。このように共用部分の使用・変更・管理については,民法の共有の規定と異なる内容の規定が置かれていますので注意してください。

建物の区分所有等に関する法律 第4条(共用部分)

1 数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする。

2 第1条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。

建物の区分所有等に関する法律 第11条(共用部分の共有関係)

1 共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。ただし、一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属する。

2 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。ただし、第27条第1項の場合を除いて、区分所有者以外の者を共用部分の所有者と定めることはできない。

3 民法第177条の規定は、共用部分には適用しない。

最高裁判所第3小法廷 判決 平成12年3月21日

原審が適法に確定した事実の概要は、次のとおりである。

本件建物の707号室の台所、洗面所、風呂、便所から出る汚水については、同室の床下にあるいわゆる躯体部分であるコンクリートスラブを貫通してその階下にある607号室の天井裏に配された枝管を通じて、共用部分である本管(縦管)に流される構造となっているところ、本件排水管は、右枝管のうち、右コンクリートスラブと607号室の天井板との間の空間に配された部分である。

本件排水管には、本管に合流する直前で708号室の便所から出る汚水を流す枝管が接続されており、707号室及び708号室以外の部屋からの汚水は流れ込んでいない。

本件排水管は、右コンクリートスラブの下にあるため、707号室及び708号室から本件排水管の点検、修理を行うことは不可能であり、607号室からその天井板の裏に入ってこれを実施するほか方法はない。

右事実関係の下においては、本件排水管は、その構造及び設置場所に照らし、建物の区分所有等に関する法律2条4項にいう専有部分に属しない建物の附属物に当たり、かつ、区分所有者全員の共用部分に当たると解するのが相当である。

これと同旨の原審の判断は正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。

弁護士中山知行