居住用財産の特別控除について
居住用財産の譲渡については、一般の土地譲渡に比べて税法上きわめて有利なことは周知の事実でありますが、居住用の財産であるかないかの判定を誤ると予期せぬ多額の税金が降りかかってきて大変なことになります。そこでいくつかの判断を誤りやすいケースをあげてみます。くれぐれも一人よがりの身勝手な判断で安易に判断をしないことが大切と思われます。
特別控除が適用されるケース
適用されるケースに該当する場合は、3000万円の特別控除が受けられます。また、その住宅や敷地の所有期間が10年を超える場合には、3000万円の特別控除後の譲渡益に対して、6000万円以下の部分は10%(ほかに住民税4%)、6000万円を超える部分は15%(ほかに住民税5%)の各税率で他の所得とは関係なく分離して課税され、一般の譲渡に比べて非常に軽減されます
特別控除が適用されないケース
上のケースは原則論ですが、次に述べるケースはやや例外ではありますが、判断を誤ると一般の譲渡として扱われることになり、注意が必要です。以下、いくつかのケースを検討してみます。
ひとつの敷地内に家と庭がある場合で、このうち庭先だけを売却したとき?
結論は、庭だけを切って売った場合は税法上居住用にはなりません。
居住用の財産を売却する場合、建物を取り壊してから売ってほしい、更地にしてもらいたい、という注文がつくことは売買のケースではよくあることです。そもそも居住用というのは人が住むことを前提としています。しかし、建物を取り壊してしまったら居住用の財産として認められないのかといえば必ずしもそうではありません。たとえ家を取り壊しても1年以内に売却すれば居住用として認められます。これが2年3年となると、更地という売りやすい状態にしておいて、値上がりを待っているという判断をされてしまい一般の譲渡として扱われます。
転勤、転地療養、仕事の関係上のアパート暮らし。何等かの事情で自宅から離れなければならず、しばらくの間自宅を空家にしておく、あるいは第三者に賃貸する等などのケースで、自宅を離れた場合、3年以内にこれを売却すれば居住用として判断されます。住まなくなっても一定の期間は居住用として認めるということです。
サラリーマンに転勤はつきもの。最近の単身赴任のケースでは、自宅の名義がご主人名義でそのご主人が家を離れて、家には残された家族が生活しているー確かに名義人が家を離れているとはいえ、家族を残している場合は結論として居住用として扱われます。しかも、その期間が3年を超えているとしても居住用として判断されます。
5.家が複数ある場合、どこが居住用になるのか
一時のリゾートブームはもう過去のはなしですが、別荘や仕事場近くの自己所有のマンションゃアパートを持ち、そこで週のうち何日かを過ごすといったケース。つまり、どこに住んでいるのかわからないわけですが、居住用か否かの判定でポイントになるのは、生活の実態がどこにあるのかという点です。
家が複数ある場合、生活の実態のないところを売却するにあたって、あたかもそこが生活の拠点であるかのようにカムフラージュする人がいます。住民票をそこに移し、週末にはそこに出向いて近所にもあいさつをし、掃除もしてくる。用意周到に居住用としての体裁を整えて売却し、3000万円の特別控除の適用を受ける。しかし、生活の実態がそこにないと判断された場合は、一般の譲渡として扱われます。
店舗併用住宅は、呼んで字のごとく住宅として使用する部分と店舗の部分とがあります。住宅を売った場合の特例が受けられるのは居住用として使っている部分に限られます。
しかし、居住用として使われている部分が、床面積の90%以上を占めている家屋や、面積の90%以上を占めている敷地は、それぞれその全体が居住用として使われている家屋や敷地であると判定して差し支えないこととされています。
つまり、10%に満たないような店舗部分は居住用部分として変身を遂げ、居住用財産の3000万円特別控除を受けることができます。