●クルマの査定と不動産の査定の根本的な違いとは?
ここまで不動産の査定についていろいろと述べてきたなかで、既に気づかれた方もおられるかもしれませんが、「不動産の一括査定屋さん」
が打ち出している「査定」というのは、「不動産の一括査定屋さん」サイトに登録している各不動産業者の方達が査定依頼者の不動産が“不
動産市場において売れるかもしれないマックスな可能性のある価格”であるということを推量しているだけに過ぎないということです。加え
て、自社に媒介を依頼してもらえるように巧みに誘導した部分のある査定だということです。
ということは各不動産業者の方達が査定依頼をしてきた方の不動産を「買取りますよ!」と云う価格ではなく、不動産市場において「売れる
かもしれないという希望的観測に基づいた超楽観的な価格!」であるということです。
それには各不動産業者とそれぞれ売却についての媒介契約(1社だけと結ぶ「専任媒介契約、専属専任媒介契約」又は各社と結ぶ「一般媒介
契約」)を結ばなければなりません。そして媒介契約後に査定価格に基づいて販売活動を開始することになります。
ただこの売出価格は不動産市場に出しても、一括査定の中で出されてきた金額が各不動産業者が「媒介獲得競争」の中で出されてきたもので
あるため、適正な市場価格からかなり乖離した高い金額になっておりインターネット不動産市場に出回ってもそう簡単に売れることなく無駄
な時間を費やしているのが現状のようです。
その結果、ある程度の期間が経過して「値下げ!」「値下げ!」と連続的に売却価格を下方修正せざるを得なくなり、結果的には他の売却物件の
「引き立て役!」「かませ犬!」的な役割になっていることが不動産売却のポータルサイト等を見ているとよくわかります。
「不動産の一括査定屋さん」サイトに登録している各不動産業者さん達も、適正な売れるであろうという価格で査定を行ってはいるのでしょう
が、高い紹介料を「不動産の一括査定屋さん」に支払い続けているとせめて1件ぐらいは媒介契約更には売買契約を結ばないことには費用対効果
があまりにも悪いということになり、知らず知らずのうちに高い金額の査定を行ってしまっているというのが正直のところではないかと思います。
それほど「不動産の一括査定屋さん」サイトからのルートで不動産市場に売却物件が出てきている事例が少なく、仮に売りに出ていても他の競合
物件に比べて高値で出ていたりとか、殆ど売却に出ていないというということが不動産売却のネット市場をみているとわかってきます。
このことは少しでも高く売りたいという消費者(ここでは「不動産の一括査定屋さん」サイトに売却査定を依頼する不動産の所有者)の意識が根底
にあるからだと云えます。そこに「不動産の一括査定屋さん」サイトが打ち出している「高く売ってあげますよ!」がうまくマッチングして不動産
のネット市場に売却物件として出回っているわけです。
ただ結果的には長い時間をかけて最後には、最初の売出価格から3〜4割も下がった価格で売却が終わってしまっている物件を不動産のネット市場
では垣間見ることが多くあります。大いなる時間の無駄がここに現れています。
要は、「不動産の一括査定屋さん」サイトを介して出てくる「価格は」不動産業者が仲介を通じて「とりあえず売ってみましょう!」という不動産業者
にとっては何のリスクも抱えない、不動産の査定を依頼してきた方を゛よいしょ!“と持ち上げた価格ということでしょう。縁日の屋台で売られている
やきそばやお好み焼きが法外に高い値段で売られていてもお祭りの場所で売られているものならコンビニで100円で売られているものが500円で
売られていても特別文句も言わずに人は買っていくものです。そういう買い方は人は理屈で買うものでなく感情で買うものだと心理学的には説明され
ています。
しかし一番大きな買い物である土地や建物を人がそういう買い方をするかはちよっと考えただけでもわかります。そのことが解っている方は「不動産一
括査定屋さん」を介して出されてくる゛縁日の屋台で売られるお祭り価格!゛みたいな価格に一喜一憂することはないでしょう。、
不動産業者にとってのリスクと云えばなかなか売れない不動産を長い期間に亘って販売し続けなければならないという時間の無駄と新聞やネットの広告
料位でしょう。ですから不動産業者はこのような元々売却価格に無理がある不動産に対しては「媒介契約」が切れる3ケ月目を迎える頃には大幅な値下
げ価格を売主に提示してきて、売却を急がせようとする動きに出てこざるを得ないということになります。
これらのことが長く不動産の取引を行ってきていると不動産のネット市場から感じ取ることができます。そして何回もの値下げ活動を行って当初の売却
価格よりもはるかに安い金額で売却をしてしまうということになり、最終的に泣きを見るのは誰かというと不動産の売主・消費者であることは間違いあ
りません。何故ならば媒介に基づいて売却を行っていた不動産業者は不動産の「買取」をしたわけではなく、ただ仲介で売っていただけであるからです。
上に述べましたことが「不動産の一括査定屋さん」サイトを通じて不動産売却を行った際の大きな特徴です。「不動産の一括査定屋さん」サイトも又各不
動産業者の方達も何の責任を取ることもありません。特に「不動産の一括査定屋さん」は免許制度下での「不動産取引業者」ではなく、現代のデジタル時
代における紹介屋さん、悪い云い方をすれば「不動産ブローカー」みたいなものですから責任を取ることは全くあり得ません。
又、「高い値段で売れると信じ込ませて売却を任せていた不動産業者」さんに責任を取らせることも法的には全く難しいと云えます。結論は売れるものは売
れる価格でしか売れないという需給バランスの中で起きたこととなるのでしょう。
ですからクルマ等の査定とは全く違うということをここまで読み進めてきた方ははっきりとお分かりになったことと思います。ご自分の車を「中古車サイ
ト」市場に出して売られたことのある方はクルマと不動産は同じ査定という言葉が付いていても、クルマは中古車さんが「買取をしてくれる!」査定であり、
不動産は不動産屋さんが「取り敢えず売ってみましょう!」という査定という大きな違いに気づかれたことと思います。
もちろん不動産に対しても不動産屋さんが「買取る」という方法もあることはあります。しかし、不動産の価格はクルマに比べれば軽く10倍、またはそれ
以上というのが当たり前ですから、買取を提示してくる不動産屋さんの数はあまり多くはないと云ってもいいでしょう。そして買い取る金額もクルマの買取
と同じように年数に応じて「減価償却後の残存価格」での買取となるわけです。ただ建物が減価償却をとっくに過ぎた残存価格がまったくない古い建物の場
合には「建物の価値ゼロ」として、土地代から建物の解体費を差し引いた価格で買取るという業者が普通です。
「不動産の一括査定屋さん」サイトを通じて不動産売却を行おうとしている数多くの方達が取るべき最良な方法は何なのか? 高く売ってあげる業者が見つか
りますよ!という「不動産の一括査定屋さん」サイトも利用すべきだと思います。そしてそこで提起される各不動産業者の査定価格を把握したうえで、ご自分
が信頼を寄せている不動産業者さんと相談をしながら売却活動に入っていくことが一番ベストな方法だと思えます。
地域の中で厚い信頼があり、そして長い経験と豊富な知識を兼ね備えている業者を捜すなり、又紹介を受けることが一番納得のいく方法での売却ができるもの
と考えます。それは自分が売ろうとしている不動産がある所在場所とはまつたくかけ離れた場所で業務活動を行っている何の土地勘も持ち合せていない不動産
業者が果たして、あなたの不動産のことを熟知しているでしょうか? 不動産はひとつひとつが違いがあり個性があるように十把一絡げに対応できるものでは
ないことは一度でも不動産を売却した経験のある方であればお分かりになることと思います。
又、瑕疵担保責任との関係では土地建物に価格を付けて売却する以上、「建物検査」を受けずに売却することは可能ですが、後日大きなトラブルを抱え込んだ
取引になる可能性も大きく孕んでいるともいえます。瑕疵と云われる建物の雨漏り、白蟻、家の傾き、給排水管の詰まりや漏れ等は検査でチェックを受けてお
く必要があります。適当なアバウト価格査定を基にして媒介契約⇒売出しでは必ずや契約後に大きなトラブルに発展する可能性が大きいと云えます。
不動産は法律的には「土地及びその定着物」と定められています。土地の売却価格を査定しようと思えば、最低でも現地に行って土地を見て確認することは当然
でしょう。土地の間口や奥行きそして形状、道路の幅員、舗装状況、道路と土地の高低差、接面道路の方位、周辺環境や日照の程度等はやはり現地に出向かない
ことにはわかりません。数値的なことも含めて人間の五感(臭いや湿度等)を駆使して感じ取ることもあり得ます。
土地がこうであるように建物に対してもやはり同じようなことが云えます。このことは多くの「不動産の一括査定屋さん」サイト欄の建物の項目に建物の構造を
入力する箇所がないのが不思議に思えることからもわかります。建物は土地と違って減価償却していく資産であるわけですから、その建物の残存価値を出してい
くためには建物の築年数に応じた減価償却を行って残存の建物価格を出していかなければ現在の建物の価格も査定できないことは査定をしたことのある不動産業
者にしてみれば当たり前のことです。しかしこの項目を省略しているのが「不動産の一括査定屋さん」サイトに殆どと云っていいほど見られます。これは意図的
に入力作業をやり易くして1件でも多くの査定依頼を受けん
がためになされているのか、あるいは「不動産の一括査定屋さん」さん自体は所詮は広告業者さんであり不動産取引を全く行っていない業者さんなのであいまいで
無知故のことなのかはよくわかりません。
確かに不動産の売却という個人にとっては少し後ろ向きなところもある査定に係ることですから、秘密裏にそして隠密裏に進めていかなければならない点はあるで
しょう。売主のプライバシーに配慮して長い時間をかけて不動産業者が現地にて査定作業を行うこともできないこともあります。ですから本当にご自分の不動産を
より高く売りたいという方は、「簡易な机上査定」という少し、又はかなり曖昧でザックリとした信憑性に欠けるものであっても、それを参考にして最終的にはご自
分が信頼を寄せている不動産業者さんと相談をしながら売却活動に入っていことことが一番ベストな方法であり悔いの残らないことになるのではないかと考えます。