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不動産の売主としての心構え

不動産の売買というのは売主の立場であれ、買主の立場であれスーパーやデパートで売っているような商品の売買と違って、ただ金額が大きいということだけでなく様々な制約があるということは一度も不動産の売買を経験していない方でも何となく理解できるものと思います。

スーパー等で買う商品のことを普通「一般消費財」、車屋さんや家具屋さんなどで買うものを「耐久消費財」という言い方をしますが、土地や建物は「消費財」という云い方の中に含まれずに、「不動産」という云い方で呼ばれています。法律的には「土地及びその上に在る定着物」という云い方がされています。このように区別されていることから売買取引の面においても欠陥(瑕疵)があった場合、簡単に返品交換がされる「一般消費財」商品とは大きく異なった取り扱いがされるということも何となく理解できるものと思います。

いきなり堅苦しい話になってしまいますが、まずはあなたが売主となる際の心構えについて考えてみることにしましょう。
 いま所有している家や土地は親から
相続したもので、「不動産の売買契約をした経験がない」という人もいらっしゃるでしょうが、多くの人は新築物件または中古物件として購入し、過去に自分自身が買主だった経験があるはずです。 まずはそのときのことを思い出してみてください。
 新築物件を
不動産業者から購入したか、あるいは中古物件を個人から購入したかなどの違いはあるにせよ、あなたが買主だったときには、売主に対して「誠実な売主であること」「問題があれば責任を持ってくれる売主であること」などを求めたのではないでしょうか。

 あなたが売主になるということは、今度は立場が入れ替わってあなた自身が誠実であること、責任があること、正直であること、さらには段取りが的確であること、取引が確実であることなどが求められるのです。
 そんなことは言われなくても当然だと感じるかもしれませんが、家の不具合などの問題、隣地との敷地境界の問題、構造物などの越境の問題、
擁壁の問題、隣人トラブル、家の中で起きた事件のこと、あるいはマンションの他の区分所有者との間で起きている問題など、本来であれば買主に対して告知しなければならないことについて、知らないふりで済ませようとする売主も少なからずいます。
 売買を
媒介する不動産業者がそれに気がつけば、重要事項として買主に説明をするのですが、売主が言わないかぎり不動産業者が気付かないような問題も少なくありません。
 家の購入希望者が現れ、そのまま契約をすれば○千万円が手に入る。でも、これを言ったら目の前の○千万円がゼロになってしまうかもしれない……。

そのように悩んで躊躇する場面があるかもしれませんが、嘘をついて、あるいは大事なことを黙ったままで契約をすれば、すぐに発覚して大きな竹箆返し(しっぺいがえし、しっぺがえし)を受けると考えたほうがよいでしょう。
問題の大きさによっては契約解除や
違約金、損害賠償を求められることにもなりかねません。
 不動産業者が売主の場合に比べれば、個人である売主の責任が大きく問われるケースは少ないとはいえ、古本や古着、中古車などを売るのとはまったく違います。売ったお金が手元に残るか残らないか、利益があるか損失があるかといったことは別にして、数千万円の「商品」の売主としての自覚が求められるのです。
 もちろん、何ら問題点のないクリアな物件なら、あまり深く考える必要もないのですが……。