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事業用借地の賃借権登記について

はじめまして、HPを見て、質問があります。

先日、事業用借地契約を交わしたのですが、そのあとこのホームぺージを見て、事業用借地の賃借権の登記が必要と判断し、賃借人に申し入れをしました。

 しかしながら、賃借人としては建物を建てれば賃借権が保護されるため、「登記は不要」との回答で、「費用は地主負担、譲渡・転貸し可の条件付き」なら応じるとのことでした。

 借地上の建物が、第3者に譲渡され普通借地権を主張される場合を考えると、登記を行い事業用借地であることを明確にしておきたいのですが、費用的にも、権限的にも地主としては厳しい物になります。

 公正証書を作成する前に気づけば良かったのですが、十分な調査ができませんでした。

現借地借家法では、借地人の保護の条文が多く、登記に借地人の協力が得られない地主側には、不利な点が多いように思われます。

 何か、他の法律で保護される様なことはないのでしょうか?

また、譲渡・転貸しに地主の承諾が必要な状態で登記を行う方法はありませんか?

回答****************************

事業用借地権の登記をするメリットは地主側にも、また借地人側にもそれぞれあります。まづ地主側から見ると事業用借地権の登記(賃借権でも地上権でもどちらでも可ですが普通は賃借権の方が多いでしょう。地上権は物権で効力が強すぎて地主の方はほとんどが嫌われます)をすることで、借地人が地主の承諾を得て、また借地借家法19条の裁判所からの許可を得て第三者に譲渡(借地権が地上権の場合は、地主の承諾・裁判所の許可は不要です)した場合,その譲受人に対しても、この土地は事業用借地権の登記があるので借地の存続期間満了時に当然明渡してもらう旨主張できることになります。

 一方、借主側は書面により事業用借地権契約をすることにより契約期間内は地主に対して自己の事業用借地権を地主に対して対抗することはできますが、借地権の登記が為されていないと、契約時の地主が他の者に土地を譲渡してしまった場合に土地の買主が、土地上に建物があるため借地権があることを認識していても、第三者である新地主には対抗できないことになります。ですから借地人側にも借地権の登記があったほうが良いのは間違いありません。ただ建物の登記が借地人名義で為されていることにより建物保護(借地借家法10条)により借地権があるのと同様の効果があるものとみなされますから、無理をしてまで事業用の借地権の登記まではなされないのが通常でしょう。

 ただ事業用借地権契約はご存知のとうり公正証書で交わすのが条件となっていますし、公正証書の原本は永久保管され、裁判になった時でも強い証拠として採用されますから、私の意見ではあえて高額な登録免許税を納めてまで事業用の借地権の登記をする必要は無いものと思います。費用を安くする方法としては、本登記でするから土地の固定資産評価額の2.5%もの登録免許税を納めねばならないということでここ熊本でも事業用借地権に伴う借地権の登記はほとんど為されていないようです。方法としてはもし登記をしておきたいということであれば借地権の仮登記が出来る筈ですからその方法をお勧めします。仮登記であれば不動産1つにつき1000円の登録免許税で済みますからあとは司法書士さんの実費だけで済むはずです。

借地借家法19条 (土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)

19  借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。

借地非訟事件手続規則・第22

 2   裁判所は、前項の裁判をするには、賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡又は転貸を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。

 3   第1項の申立てがあった場合において、裁判所が定める期間内に借地権設定者が自ら建物の譲渡及び賃借権の譲渡又は転貸を受ける旨の申立てをしたときは、裁判所は、同項の規定にかかわらず、相当の対価及び転貸の条件を定めて、これを命ずることができる。この裁判においては、当事者双方に対し、その義務を同時に履行すべきことを命ずることができる。

借地非訟事件手続規則第6条

 4   前項の申立ては、第1項の申立てが取り下げられたとき、又は不適法として却下されたときは、その効力を失う。

 5   第3項の裁判があった後は、第1項又は第3項の申立ては、当事者の合意がある場合でなければ取り下げることができない。

借地非訟事件手続規則・第13

 6   裁判所は、特に必要がないと認める場合を除き、第1項又は第3項の裁判をする前に鑑定委員会の意見を聴かなければならない。

 7   前各項の規定は、転借地権が設定されている場合における転借地権者と借地権設定者との間について準用する。ただし、借地権設定者が第3項の申立てをするには、借地権者の承諾を得なければならない。

(借地権の対抗力等)

10  借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。

 2   前項の場合において、建物の滅失があっても、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお同項の効力を有する。ただし、建物の滅失があった日から2年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限る。

 3   民法(明治29年法律第89号)第566条第1項及び第3項の規定は、前2項の規定により第三者に対抗することができる借地権の目的である土地が売買の目的物である場合に準用する。

 4   民法第533条の規定は、前項の場合に準用する。