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再々: 事業用借地の賃借権登記について

早速のご回答ありがとうございます。

またまた、疑問がわいてきました。

1.登記は本当に必要でしょうか?

回答の中の、「もし建物の譲受人が事業用借地であることを知らなかったとしても、それで普通借地権に簡単に移行してしまうようではなんのためにわざわざ事業用借地権契約を公正証書で締結することを法律的に義務づけたかの法律改正の意味がなくなってしまいます。公正証書にした契約書に平成OO年O月O日までしか借地権の効力がないことが書かれている以上、譲受けた新しい借地人も期限がきたら責任をもって建物を取り壊して明渡す義務があります。」を考えると、事業用の借地権は登記をしなくても、公正証書で、守られるように思えるのですが。仮登記でも登記は必要なのでしょうか?分からなくなってきました。

2.仮登記はできそうにないように思えます。

実状の説明が不足していました。

まず、事業用借契約(公正証書)が、8/15の契約、9/1より開始されたいるため、2号仮登記はできない。また、1号仮登記も契約(公正証書)がある以上、該当しないように思えます。

登記義務者からの、裁判所からの仮登記仮処分命令を添付しての登記の制度がないのは、定期借地契約おいては地主側に不利です。

 しかし、公正証書で守られ、登記が不要と言うことであれば、借地人と対等に思えますが、仮登記でも登記が必要となれば現制度は問題です。リスクを考え登記をすれば万全とは思いますが、従来の借地制度の借地人の権限を守る制度がのこり、地人側にあまりも負担が大きい制度となったように思えます。定期借地制度は、普通借地をいやがる地主から土地の供給を促すための物と思いますが、(特に事業用借地契約は)その目的の万全にするため、地主側が従来しない登記が必要とは何か変に感じます。

 今更遅いですが、十分な調査をすべきでした。公証人の方からも、地主側からみて、登記しない場合の不利益はないと言われたため、その言葉を鵜呑みにしていました。

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回答

仕事が詰まっていましたため返信が遅くなりまして申し訳ありません。

事業用借地権(賃借権)の仮登記の可否についてですが、この件については私の手許に不動産登記先例集なるものがなくはっきりいつて仮登記ができるかどうかについてはこの先例集を見ることにより解決するのではないかと思います。理論的には仮登記はできるものと思われます。しかし定期借地権制度自体が平成4年に施行され、まだ歴史が浅いため判例でもほとんど見当たらないし、登記先例においてもはたして見当たるかどうかは極めて疑問といっていいと思います。お知り合いの司法書士さんがおられるならば登記先例集に事業用賃借権の仮登記先例があるかどうかの確認を為されてはいかがですか。

事業用借地権契約における公正証書による締結は効力要件になっていますから、契約期間中に借地人からの賃借権の譲渡・転貸の申出が合った場合は必ず土地所有者の承諾が必要になっていることからして、地主であるあなたが承諾をする際には承諾書の中に事業用借地権の譲渡・転貸である旨の記載がある形で承諾書を発行しなければなりません。万一、その旨の欠落した承諾書であれば普通借地権としての譲渡を受けた旨の反論を譲受人から為されたとしても、その反論に対抗できないことになる恐れもあります。民法の債権譲渡における要件の中に、゛債権譲渡は債務者に対する通知または承諾゛というのがありますが、債務者が異議を留めない形で承諾をした時は゛本来譲渡人に対抗できていたものが譲受人に対抗できなくなる゛条文があることからしても、事業用借地権の譲渡においてもこのことが類推される恐れがあるからです。(民法467条468条参照)

 賃借権の仮登記が仮登記義務者であるあなたの方から(登記義務者からの登記請求権の行使)できるということであれは゛、費用的にもそれが一番ベストで対抗要件も仮登記という形で保全されるわけですからそれをお勧め致します。

 私の見解は公証人さんと一緒で効力要件である公正証書による事業用借地権契約が為され、さらに将来借地権の譲渡・転貸がなされたときには承諾書の中にきちんと事業用借地権である旨の記載さえあるならば譲受人からの普通借地権の主張がなされることはないものと思います

下記に掲げるのは学者による定期借地権の登記についての学説です。

司会(吉田) 続いて、国士館大学の上原由起夫氏に「対抗要件・譲渡・損保」に関して

 ご報告いただきます。重要は、対抗要件においていただきます。

対抗要件・譲渡・担保:上原由起夫(国士館大学)

 定期借地権の登記の要否に関する問題については、まず昭和六○年の「借地・借家法改

正に関する問題点」では、登記をするということが前面に出ておりました。そこを見ます

と定期借地権については、「この借地権を譲り受け、転借し、又は担保の目的とする者等

第三者のために、何らかの方法で公示されなければならない。その方法としては、借地権

が期間の満了により当然消滅する旨の合意を借地契釣の一要素とした上、不動産登記上こ

れを登記するものとし、この合意は、登記することによって初めて効力を生ずるものとす

るか、又は登記しなければ第三者に対抗することができないものとする」、つまり効力要

件とするか対抗要件とするかはともかく登記が考えられていました。そのあとの「なお…

」というところで、公正証書ということがちょっと出てきていたのです。

 そこでこの問題点においては、定期借地権については登記ということが念頭に置かれて

いたはずです。「別冊NBL」二○号の稲葉論文、『借地・借家法改正の方向』では、登

記を要件とすることに固執する必要はないとしておりまして、結局それを踏まえて今回の

「改正要網試案」では、定期借地権の特約は、公正証書によってしなければその効力を生

じないものとする、つまり公正証書を効力発生要件としたわけで、登記については採用し

なかったのです。

 その理由は次にありますように、「定期借地権が特別の法律効果を有する借地権である

ことにがんがみ、第三者に対する関孫への配慮から、公示として登記を要求することにつ

いても検討が行われた。しかし、登記技術上の難点があるほか、登記を欠いた場合の効果

をどのようなものとするかが難しいこと、公示の相手方として問題となるのは建物の賃借

人であろうが、借家契約をするに当たり土地の登記簿を調べることはまれであろうから、

実賞的な保護手段となりうるか疑問であることなどから、『試案』では、採用されていな

い。ただし、建物買取型定期借地権の場合には、土地所有者が売買契約につき第三者に対

抗するため仮登記をすることが考えられるから、この限度では、登記による公示がされる

ことになる」というのが、「試案」の説明です。この試案に対して『法律時報』や『ジュ

リスト』による座談会では、かなり多くの学者が第三者に対する関係への配慮から、公示

として登記を要求すべきだと述べています。その理由は、例えば、土地所有者が土地を譲

渡する場合に登記があったほうが有利である、登記照覧の慣行を推進する、長期型定期借

地権付マンションの場合には、区分所有権譲渡に伴う借地権譲渡が、五○年の間に頻繋に

起こる可能性がある、あるいは長期型定期借地権の場合、相続が発生し、子孫も増えてい

ると公正証書の管理が困難になる、定期借地権であることを知らずに買い受けたり、担保

を設定するものが現れることも予想される、借家人保護の必要もある、などという理由で

す。

 そして「試案」において、登記は技術上難点があるからということについては、稲葉論

文で、「定期借地権てあることは、普通借地権に比して、地主には有利であるが、借地人

には不利なものである。借地権の登記は、その構造上、登記権利者は借地人で、登記義務

者は地主となる。その場合、登記権利者たる借地人に不利な内容の登記を義務づけ、ある

いは成立要件とすることが論理的に成り立つかどうかが問題となる」というのが、登記技

術上難点とされております。

 しかし、実際、登記があったはうが登記義務者に有利である場合には、登記義務者に登

記請求権がある。いわゆる登記引取請求権です。これは、昭和三六年一一月二四日の最高

裁判決(民集一五巻一○号二五七三頁)があります。一応これは通説だと思われますので

、この登記技術上の難点という点は克服し得ると思います。

 しかし、ここで私が言いたいことは、定期借地権を登記すればいいのかと単純に考える

のではなくて、私の課題は「対抗要件、譲渡、担保」ですが、定期借地権のそれぞれの類

型はかなり違っていて、この課題も特に公示、対抗要件という課題は、定期借地権を類型

ごとに分けて考察する必要があるのではないかと思われます。

 まず、長期型定期借地権の場合です。これは五○年ないし六○年という長期の存続期間

である。また、その存続期間が満了すれば借地関係はそこで終わってしまいますから、逆

に言いますと、その間は借地権者にフルにその土地を利用させるべきであると、考えます

 ですから、長期型定期借地権は、定期地上権とすべきであるというのが私の考え方です。

 先ほど藤井さんの報告にもあったように、比較法的には、そもそも借地権は物権にする

というのが法律常識です。わが国でもポアソナードの旧民法では物権としていたのですが

、現行民法典で債権たる賃借権も借地権となってしまったのは、一種のボタンのかけ違い

ではないかと思われます。それゆえに賃借権の物権化的傾向ということでごまかしごまか

し今日まできたわけです。本来、最初から物権であればよかったものを、結局本来そうあ

るべきものがそうでなかったから、そういうかたちでごまかしてきたのが現状である。そ

れなら、今度新しく定期借地権を作るならば、最初から定期地上権としてしまったほうが

いいのではないか。

 そうしますとこれは地上権ですから、もちろん譲渡自由です。土地の賃貸も自由てある

。賃借権だと、第三者による債権侵害行為の排除請求権のような面倒な議論もありますが

、地上権は物権ですから物権的請求権でいけますし、また損保化についても、民法三六九

条二項でそのまま抵当権の目的になるので、非常に筒明な処理がてきます。

 ただし抵当権を設定する場合には、担保価値としての借地権価格ですが、これは定期借

地権という性質から、存続期間の満了に近づくにつれ、やはり担保価値は急激に低下する。

 そういう問題は、先ほどの澤野さんの報告とも関連することです。

 それては公正証書はどうなのか。私は長期型は地上権としますから、その登記でいい。

しかしそれは単なる対抗要件ではなくて、この場合は効力発生要件とすべきであると考え

ております。実際に登記を、対抗要件でなくて効力発生要件とする例は、すでに民法三七

三条三項の抵当権の順位の変更にもあります。この場合は、それが望ましいであろう。そ

うしますと、わざわざ公正証書で別に効力発生要件にする必要はない。屋上屋を架すよう

なものですから、それは登記でいいというのが私の考えです。

 次に、短期型定期借地権です。この場合は逆に、私は、賃借権に限ると解します。地上

権、賃借権の両方を借地権といいますから、両方あり得るのですが、長期型は地上権にす

る、逆に短期型は賃借権に限るというのが私見です。そしてこの場合には登記不要です。

この場合には、その効力発生安件として公正証書を考えでおります。「試案」では、この

短期型定期借地権を法人でないものに譲渡し、または転貸する場合には裁判所による賃借

権の譲渡・転貸の許可等の規定を通用しないものとし、借地権者が短期型定期借地権を法

人でないものに譲渡し、またほ転貸することを土地所有者が承諾したときは、土地所有者

が、そのときに普通借地権を設定したものとみなすものとしております。そして「譲波の

自由が確保されている地上権たる借地権については、このような規制をすることができな

い。そこで、地上権たる借地権は、短期型定期借地権とすることができないとすることが

考えられるが、この点については、地上権たる借地権の例が少ないこともあり、なお検討

することとしている」としていますが、私見では短期型定期借地権は賃借権に限ると解し

ますから、この試案の説明のこの問題はクリアされることになります。つまり短期型定期

借地権は純枠債権としての賃借権として、当事者の契約の自由を尊重していくべきである

と考えます。

 もっとも法人てない者が買受人になるときは借地法九条ノ三の規定を適用しませんが、

あらかじめ賃貸人の承諾をとりつけ、登記があれは短期型定期借地権を抵当権の目的とし

て、抵当権の実行により法人でない者か取得してしまうことが可能である。しかし、その

場合に、抵当権の実行としての競売の場合には、買い受けの申出をすることができるのは

法人に限るべきである。これには民事執行規則三三条を使えばよいという山野目さんの考

え方に賛同します。

 建物買取型定期借地権の場合には、これは地上権、賃借権どちらでもいいんてすが、賃

借権が通常であろう。私はこの場合には公正証書による設定ではなくて、土地所有者が建

物についての売買契約上の権利を第三者に対抗するために所有権移転請求権仮登記をする

のですから、この仮登記を効力発生要件とすべきであると考えます。それによって、登記

による公示という点も満たすわけです。

定期借地権に関する諸問題

http://www.misawa.co.jp/TOTOKEN/%89%EF%88%F5%8F%EE%95%F1/%8C%F6%8AJ%8C%A4%8B%86/9004.htm

には定期借地権に関する登記以外のことでも議論がさまざまな角度からなされていますのでご覧になられると大変参考になると

思います。

大田宅建殿

色々とお教え願いありがとうございます。

 本日近くの司法書士の方と話を致しまして、建物を譲渡する様な事態の場合には、もし第3者が普通借地権を主張した際には、借地人に対して、事業用借地を完了できないことに対する損害賠償をできるとのととでした。しかし、現実的には、借地人がその損害賠償可能な状況にないことが多く、地主側としては土地を第3者から完全に守るには、登記しかないと言うことになりました。

とりあえず、費用は当方持ちで、登記に協力願えるように話をして、協力が得られないときは、調停、裁判と進んで行くしかないとの結論となりました。

 もっと安く、地主が定期借地権を登記することが可能なようになれば、もっと借地が増えるように思います。

最後に、本当に色々とありがとうございました。