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相続分不存在証明には抵抗が・・・  名前:まるこ 2002/02/06(Wed) 21:06:50

 父は8年前、父の親は30年以上前に亡くなっています。父は農家の長男ですが家を継ぐのが嫌で外に出ました。先日、家を継いだ叔母(父の妹)が「相続分不存在証明」なるものを置いていきました。推測ですが、登記していない不動産が出て来たのだと思います。父は一切の相続を放棄し何も貰わなかったと聞いていましたので、娘の私としては、「相続分不存在証明」に印を押すのは抵抗を感じざるを得ません。権利を主張する気も全くありません。こんな場合、どんな手続きが残されているのでしょうか。今更、私の代で、相続放棄というのは無理なのでしょうか。ちなみに、父の実家とは、ほとんど付き合いはありません。

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数次相続? 代襲相続?・・・  名前:大田宅建事務所 2002/02/10(Sun) 02:31:00

資料の作成と整理に追われていて返事が遅くなり申し訳ありませんでした。ご質問から判断致しますと父も祖父もそれぞれお亡くなりになられており、今になって突然祖父の不動産が出てきて、その登記をどうすればいいのかということだと考えられます。

 ご存知のように相続には順序があって被相続人(この場合は祖父)の配偶者(配偶者は常に相続人になれる)および子     親     兄弟 という順序で相続人になれることが法律で決められています。相続人の種類を大別すると、血族相続人と配偶者相続人とがあります。血族相続人には順位が定められており、子およびそれを代襲するものがないときは第2順位被相続人の直系尊属が、それもないときは第3順位として兄弟姉妹が相続人となります。配偶者は、これらの血族相続人と並んで、常に相続人となります。

 祖父の親や兄弟も既に亡くなっている可能性が大でしょうから祖父の子であるあなたのお父さんや叔母さんが相続人になることになります。祖父の孫であるあなたが亡き父の相続分を継承できるケースとしては代襲相続が考えられますが、それには要件があって父のほうが祖父よりも先に亡くなっていなければなりません。私のホームページの中にある不動産相談室の「代襲相続」を読んでください。あなたのケースでは祖父の方が父よりも早く亡くなっていらっしゃるので代襲相続には該当致しません。

 相続の専門用語に「数次相続」というのがあります。これは登記簿上の登記名義人が死亡し,既に開始した相続による所有権移転の登記未了の間に,その相続人等の死亡により第2の相続が開始し,さらに第2の相続における相続人の死亡により第3の相続が開始したような場合をさします。

 登記先例によれば中間省略による相続登記が認められる場合としては中間及び現在の相続人の各相続による所有権の取得が同一の原因である場合に限られることになっています。中間又は現在の相続人の所有権取得の相続原因が異なる場合は中間省略登記は認められないことになっています。詳しくは、わたしのホームページのなかの不動産相談室「数次相続」を読んでみてください。

 しかし、あなたのケースではいまだ祖父の子である叔母さんが健在であるということからして、祖父の相続人になるのは叔母さんと、まだ健在であれは叔母さんの兄弟たち(あなたのお父さんは既に亡くなれています)ということになります。数次相続が考えられるのは叔母さんや叔母さんの兄弟達も既に亡くなっているケースなのです。

 叔母さんが「相続分不存在証明書」なる書類を置いていかれたということですが、「相続分不存在証明書」とは相続人の中にまだ被相続人が健在であった時に贈与や遺贈等を受けた、つまり特別受益者とされる相続人

に該当するときには相続分がないという法律の規定のことをいいます。あなたのお父さんがこの特別受益者であった場合には祖父の財産に対して相続分がないということになります。民法903条参照

 

◎相続の態様により、必要となる書類

1. 遺産分割協議による場合

*遺産分割協議書

*印鑑証明書

2. 相続放棄をした者がある場合

*相続放棄申述受理証明書(家庭裁判所)

3. 特別受益者がある場合

*相続分不存在証明書(903条証明書) 民法903条

*印鑑証明書

5. 遺言書のある場合(相続)

*自筆証書遺言(要検認)・秘密証書遺言(要検認)・公正証書遺言(検認不要)

6. 遺言書のある場合(包括遺贈・特定遺贈)

*包括遺贈 = 遺言によりその財産の全部又は割合的一部を贈与すること

*特定遺贈 = 遺言により特定の財産を贈与すること

http://www.ootatakuken.com

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虚偽としか言いようのない証明書  名前:まるこ 2002/02/11(Mon) 00:10:06

大変丁重なご説明を有り難うございます。亡くなった父が親から贈与も遺贈も受けていないのに虚偽としか言いようのない「相続分不存在証明」に印を押すことに抵抗を感じます。一般的には「相続分不存在証明」が便宜的に広く利用(悪用?)されているらしいのですが、他の方法で「私は何もいりません」と意志表示する方法はないのでしょうか。

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相続放棄の心配無用  名前:大田宅建事務所 2002/02/13(Wed) 16:25:16

前回お答えしたようにあなたのケースでは代襲相続にも数次相続にも該当しませんから、あなたは今、現に被相続人である祖父の子である叔母さんが存命中である事からして叔母さんが相続人に該当し、遺言であなたに財産をやるということが書かれてでもいない限りあなたが祖父の財産を相続することはありません。 ですから相続放棄の心配も無用です。

 言葉だけの説明で理解に苦しむようでしたらご自分なりに「相続関係図」を作成してみられたらいかがでしょうか。相続人になれる当事者がはっきりする筈です。

http://www.ootatakuken.com

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