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契約が手付放棄によって解除された場合の仲介業者への報酬についてお聞きしたいのですが、弊社は本契約の買主側の仲介業者の立場なのですが、本契約は売買代金1億円の土地建物売買契約であり、買主が売買代金1割相当の手付金を支払い契約が成立した後、買主より手付金放棄による契約解除の申し入れにより解除されたのですが、売主には買主よりの手付金による利益が発生していますが、弊社の立場では仲介手数料の請求はできないものでしょうか?

【回答】

いったん成立した売買契約が契約の履行着手前に買主側の手付放棄によって契約が解
除された場合の仲介業者への報酬はどうなるかということ、不動産売買契約不成立で
も報酬請求は可能?かということですが、宅建業者が依頼者に対し報酬を請求し得る
ためには、媒介を依頼された売買契約が成立することがまず必要です。契約が条件付
で「条件付売買契約が成立した」場合には報酬請求ができそうに見えます。しかし、判
例は「有効」に契約が成立しなければやはり報酬請求することはできないと解していま
す(大阪高裁判昭
43.11.28下民1911-12753)。条件付売買契約は、その条件が未
確定の間は、契約の効力も未確定の状態に置かれるので、これに連動して報酬請求権
も未確定の状態に置かれるわけです。
 条件には、停止条件と解除条件(民法127条以下)とがありますが、売買が停止
条件付であっても契約は成立し、ただ条件が成就するまでの間はその効力が発生しな
いということになります。したがって、依頼された売買が停止条件付で成立し、条件
の成就が未定の間は、報酬請求権も発生しないと考えられ、条件が成就したときに初
めて宅建業者は報酬を請求できることになります。
 又、条件が解除条件付で成立した場合についても、売買契約が解除条件付の場合
は、解除条件が成就するまでの間は有効な契約ですから、業者は契約成立と同時に報
酬請求権を取得します。又、解除条件が成就すると、当該契約は無効ということにな
りますから、宅建業者の報酬請求権も消滅することになります。
 それでは報酬の代わりに経費として請求できないものかという考えもありますが、
仲介の事務処理費用といってもそれは広告費、人件費などいろいろあり一律ではあり
ません。宅建業者の仲介に要した費用は原則として依頼者に請求することはできませ
ん。費用というのはいろいろありますし、報酬が請求できないから経費に名を借りて
多額の請求を依頼者にする危険があります。又、商人(宅建業者は商法上は商人で
す)というのは、ある程度経費を負担して客と取引をするというのが常識です。そう
いう観点から、宅建業者の仲介業務に伴う通常の広告費用などは、仲介人が受領すべ
き報酬に含まれていますから、取引契約が成立せず報酬を請求し得ない以上、費用も
原則として請求できません。ただし、依頼者の依頼によって行う広告等の料金につい
て、判例はそれが報酬の範囲内で賄うことのできない多額にわたるときは、特別の広
告料金を意味するものとして依頼者に請求することができるものとしています。
以上が、私のホームページの中から答えになるものを引用いたしました。買主と御社
間の委任関係が特殊な事情で結ばれてでもない限りは結論として仲介手数料の請求は
難しいと思います。

大田宅建事務所
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