署名・印鑑の豆知識と委任状の常識
◆署名・印鑑の豆知識◆
◆委任状の常識◆
◆ 署名・印鑑の豆知識 ◆
<印鑑の役割>
1. 契約書等の文書を作成したときに、文書作成者の最終的、かつ確定的な意思表示を明確に示す事。
2. 予め届出てある印鑑がある場合は、その印鑑と照合して本人確認を行うため。
3. 商品などを受取った時の領収の証拠とするため。
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<署名と記名>
署名=署名とは、本人自らが、自分の氏名を手書きで書くこと。
(1)文書を作成する当事者本人であること
(2)本人の自筆であること
以上の二つの要件を備えたものが署名であり、以下に述べる
記名押印とは法律上の効果では同じものであり、署名のみでも作成文書の効力は有効であるが、英米系の国と異なり、日本においては、古来、印鑑を用いる慣習があるので、慣習上、署名のみでは文書の体裁上不十分で、署名・押印という形がとられており、その形が最も望ましいとされる。
記名=
記名とは、署名以外の方法で、自分の氏名を記載する事。例えば、 ゴム印・代行者による印・ワープロによる印等。
(1)手書きによる署名以外の方法であること
(2)自分の氏名であること
以上の二つの要件を備えて、文書の最終確認の意思領表示を表したものが記名である。
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<捺印(押印)>
捺印(押印)=
捺印(押印)とは、印章を使って文書に印影を残す事で、署名者の当該作成文書に対する確定的な最終の意思表示を表明するという意味がある。
なお、押印は、必ず印章を用い押したものでなければならず、印刷してあるものなどでは効力は生じない。
また、押印は、本名でなくても良く、極端な場合は、他人の名の印を押したものであっても良い(但し、後でトラブルの元になる)。
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<実印と認印>
実印=
実印とは、予め、市区町村役場に登録してある印の事。
認印=
認印とは、実印以外の印の事。
実印と認印はその印鑑としての効力においては、確実に本人が捺したとの証明があれば差はない。
実印と認印は、その証明力において差があるのである。
つまり、実印は、その印鑑が役所に登録してあるので、その印鑑が本人のものであるという証明が容易に認められるが、 認印の場合は、所謂「三文判」として、何処でも入手できるものであるから、印としての証明力の点で不十分なのである。
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<銀行印>
銀行印=
銀行印とは、銀行に届出てある印の事で、認印の一種である。
銀行と取引する場合は、全てこの銀行印で行うことになるが、銀行は、たとえ、その印が、本人以外の者により、本人の承諾なく捺されたとしても、銀行は一切責任を負わない事になっているので問題となっている。
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<拇印・書き判>
拇印=
拇印とは、指先に朱肉をつけて文書に押し、指紋を残す事。
書き判=
書き判とは、手で、自分の姓や名、頭文字を書き、その字の周りを囲む事。
拇印・書き判は、それを文書に押し又は書いたとしても、署名や記名押印と同様の効力は殆ど生じない。
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<割印・契印>
割印=
割印とは、契約書の正本と副本、原本と写しのように、同じ文面の文書を二つ以上作成したとき、その独立した二つ以上の文書が一つであること、又は、関連のあるものであることを証明するために、双方の文書に、一つの印を双方の文書にまたがって押す印のこと。
契印=
契印とは、契約書が二枚以上になる場合に、それが一つの契約書であることを証明し、後で、抜き差しできないように、両ページにまたがって押す印のこと。
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<捨て印>
捨て印=
捨て印とは、文書の完成後、後で、字句などの訂正をしなければならない事情が発生したときのことを考えて、予め、文書の余白部分に、押印した印と同じ印を用いて押すものである。
捨て印は、相手が、相当信頼できる者でない限り押すべきではない。契約書の金額欄や期間を本人の承諾なく簡単に変えられてしまい、後で、文句を言うことができなくなる。
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<止め印>
止め印=
止め印とは、契約書の余白が生じた時、その余白に、後で余計な文字を書き込めないように、最後の文字の末尾に、ここまでしか書いていない事の証拠のために押す印。「以下余白」としても同じ。
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<訂正印>
訂正印=
訂正印とは、契約書に記載して文字を書き直したり、書き加えたり、削除したりした時、権限ある者が、確かに訂正した事の証明のためにする印。
―訂正の仕方―
訂正箇所に、元の文字が読めるように二本線(=)を引いて行う。
横書きの時は、その行のすぐ上に、縦書きの時は、右横に、訂正した文字を書き、欄外に、「削除
XX字」・「加入XX字」と書き、訂正字数を記載し、印を押す。―訂正印の押し方―
1.訂正箇所のあるページの欄外に押す。
2.訂正箇所に押す。
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<消印>
消印=
消印とは、契約書に収入印紙を貼ったとき、その印紙とその契約用紙にまたがって押す印で、印紙の再使用を防ぐためだけに押す印である。
従って、その契約文書に収入印紙が貼ってなく、消印も捺してなくても契約書作成上の効力に影響はなく、その契約書は依然有効である。
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※ 未成年者の署名(記名)押印
未成年者は単独では有効な契約を締結する事はできない。しかし、例えば、未成年である自分の子供が、他人に傷害を与えてしまった様な場合、被害者は、損害賠償を未成年者に請求する事になるが、未成年者とは有効な契約を締結することができないのであるから
(1)法定代理人が未成年者に代わって契約の締結をする
(2)未成年者の契約を法定代理人が同意する
以上の何れかになるが、通常、法定代理人は両親であるから、父母双方がそろっていれば、「親権は共同で行使する」(民法818)ので、父母双方が署名(記名)押印する事になる。但し、父母の何れか一方しかいない場合は一人のみでよい事になる。
未成年者の法定代理人として署名する場合に注意すべき事は、必ず肩書きを付ける事である。
住所
XX県XX市XX町 ↓(甲) 未成年者
XXXX 印住所
XX県XX市XX町上記法定代理人
親権者 父
XXXX 印同 母
XXXX 印・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
※ 代理人の署名(記名)押印
代理人によって契約が締結された場合は
(1)本人の名称
(2)代理人である事の表示
(3)代理人の氏名
住所
XX県XX市XX町(1)
XXXX(2) 上記代理人
住所
XX県XX市XX町(3)
XXXX・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
※署名・押印があっても無効な契約
(1)強行規定に反するもの・・・強行規定に反する契約は、たとえ、当事者間で合意しており、有効な署名・押印があってとしても、その合意自体が不適法であって無効である。
(2)公序良俗に反するもの・・・その契約の内容が、
a.犯罪に係わるもの b.人倫に反するもの c.射幸的なものd.自由を極度に制限するもの e.暴利行為などに係わる ものは、有効な署名・押印がなされていても、その契約
自体が無効である。
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◆ 委任状の常識 ◆
委任状とは
・・・ 委任状とは、ある人に一定の事項を委任した旨を記載した文書のことで、代理権を与えたという事の証拠となる文書である。
代理人には、未成年者に対する親権者のように、法律が定めた法定代理人と、本人との任意の意思表示に基づき代理権が生じる任意代理人というものがあるが、委任状とは、後者の任意代理権を与えたという証拠となる文書である。
委任状の書き方
・・・ 委任状の書き方には、法律上、どう書かねばならないという定めはありません。しかし、(1)いつ(2)誰が(3)どの
様な内容を(4)誰に与えたかが記載されなければなりません。
そこで重要な点は、その記載内容が、明確に特定していなければならないということです。つまり、代理権を与えた範囲(委任の範囲)が明確でなければならないということです。
委任状の委任内容・受任者を空白
・・・ 委任状の委任内容・受任者などを空白にしたまま委任者が委任状に署名・押印をするときがあるが、これを「白紙委任状」という。この白紙委任状は、受任者が、委任者の予期しない委任内容を書き加えたりして、権限を越えた行使が行われる可能性があり、後でトラブルの原因となるので、白紙委任状は避けた方がよい。例えば、実印を押してある白紙委任状と印鑑証明書があれば、受任者は、貴方の所有不動産を貴方の同意を得ることなく勝手に処分する事もできるのである。
委任状
私は(
A)XXXXを代理人と定め、以下の事項を委任します。(
B)一、XXXXXXXXXXXXXXXXX.一、
XXXXXXXXXXXXXXXXX.以上、代理委任状に署名、押印します。
XX年XX月XX日
住所
XXXXX氏名
XXXX 印※ 上記(
A)と(B)について記載のない場合が「白紙委任状」となる。※ (
A)について、受任しようとする者の氏名と住所を書く。※ (
B)について、例えば、不動産の委任であれば、登記の目的と原因・当事者・不動産表示などを記載する。
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―委任状に関する注意事項―
● 委任状には捨て印を押さないこと。
委任内容を変えられる危険性がある。
● 委任文言を書いたら、余白に止め印をするか、「以下余白」と書く。
委任事項を書き加えられる危険性があるから。
● 委任状を書いたら、コピーをとっておく。
委任状の記載事項を後で確認するため。
● 委任する者が数名いる場合は、委任状に押す印は各人のものを押す。
● 委任者が数名の場合、委任内容が全く同じであれば、一枚の委任状に、数名の署名、押印をそれぞれ捺す。一部でも委任内容が異なれば各人別に委任状を作る。
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