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解説 宅地建物取引と消費者契約法

 消費者契約法が平成12年4月28日に成立し、平成13年4月1日に施行されます。

 近年、消費者・事業者間の情報・交渉力の格差が消費者契約(消費者と事業者間の契約)のトラブルの背景になっていることから、この法律では、

@ 事業者の一定に行為により消費者が誤認あるいは困惑して契約をしてしまった場合、その契約を取り消すことができる

A 事業者が損害賠償の責任を全く負わないとする等、消費者の利益を不当に害する契約条項を無効とする

以上により、消費者の利益を守ることを目的としています。

 また、この法律は、業種を問わずすべての消費者契約に適用があり、宅地建物取引も例外ではありません。売買契約はもちろんのこと賃貸借契約、媒介契約その他、宅建業者の相手方が消費者である契約であればすべて適用になります。

 宅地建物取引においては、消費者保護の意味では最も先駆的ともいわれる宅地建物取引業法により、取引の適正化が図られてきましたが、宅建業法が行政規制を主としているのに対し、消費者契約法は「取消し」や「無効」といった効力規定を含む民事ルールです。殊に、契約締結課程での事業者の不用意な言動が契約の「取消し」を招く恐れがありますので、高額な土地や住宅を扱う宅地建物取引においては十分に留意する必要があります。

法律をよく理解し、契約締結過程の言動には細心の注意を払っていただきたいものです。

 このリーフレットは、経済企画庁(現 内閣府)より公表されている「遂条解説―消費者契約法」(平成12年9月)や、経済企画庁・建設省(現 国土交通省)への照会に対する回答に基づいて、消費者契約法の概要および同法と宅地建物取引業の関わりを取りまとめたものです。こと法律に関する事項であり、消費者と事業者の特定の紛争に係る最終的な判断は、司法(裁判所)が行うため、今後の判例の展開には十分ご注意ください。ここでは宅地建物取引業を行うにあたり参考となるよう、現段階での基本的な考え方・事例等を掲載しております。

 宅建業者が、契約締結にあたり、不適切、不誠実な行為を厳に慎み、綿密な調査や正確な情報に基づき、「正しい契約」を行うことが、トラブルを防止することになります。

 皆様方が日常業務を行うにあたってこのリーフレットをお役立ていただければ幸いです。

平成13年1月

(社)全国宅地建物取引業協会連合会

会長 藤 田 和 夫

消費者契約法条文参照

 

消費者契約に当たる限り,適用除外を設けず全取引を対象

 消費者契約法において対象となる「消費者契約」とは、「消費者」と「事業者」との間で締結される契約をいいます。「消費者」とは個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいい、「事業者」とは,法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいいます。個人免許を受けた宅建業者も「事業者」です。

消費者契約の締結過程にかかわるトラブルの解決

 消費者契約締結の勧誘に際し,事業者が不適切な行為(1不実告知・断定的判断の提供・不利益事実の不告知、2不退去・監禁)を行ったことにより,消費者が自由な意思決定を妨げられたこと(1誤認、2困惑)によって契約を締結した場合,消費者は契約を取り消すことができます。

1.「誤認」類型

(1)不実告知

重要事項(消費者契約の目的物の内容又は取引条件であって、消費者の契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすもの)について事実と異なることを告げること

例)売主業者が消費者に対し,築10年の住宅を築5年であると告知して売買契約を締結した。

宅建業法でも,重要な事項について不実のことを告げる行為は禁止されています(第47条1号)。しかし,業法の不実告知が故意(知っていながらわざと)を要しているのに対し,消費者契約法の不実告知は事実と異なることにつき必ずしも主観的認識を要さず、告知の内容が客観的に真実でなければ足りるとされています。したがって、(誤っていると)知らないで告知を行った場合も取り消しの対象となります。

(2)断定的判断の提供

 消費者契約の目的物に関し,将来における変動が不確実な事項(消費者契約の目的物の価額,消費者が受け取るべき金額等)につき断定的判断を提供すること

例)「この土地の値段は5年後には2倍になりますよ」との告知

宅建業法においても,「利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供する行為」は禁じられています。(第47条の2第1項)

(3)不利益事実の不告知

重要事項又はその重要事項に関連する事項について消費者の利益となる旨を告げたうえで、その重要事項について消費者の不利益となる事実を故意に告げないこと

例)マンションの売買において,売主業者が「眺望・日当たり良好」と告知したが,半年後に隣接地に建設計画があると知っていたにもかかわらずそのことを告げなかった。

宅建業法は,業者に重要事項や重要な事項についての厳格な説明義務を課しており,重要な事項(それを告げないことによって取引の相手方等が重大な不利益を被る恐れのある事実)について,知っているにもかかわらず告知しないことを禁止しています(第47条第1号)

 一方,消費者契約法は事業者の情報提供を努力義務にとどめており,「不利益事実の不告知」については、単に重要事項の不提供で取消しを認めるのでなく、重要事項について消費者の利益となる旨を告げた上で不利益となる事実を知っていて敢えて告げない行為を規定しています。

 なお、事業者が消費者に対し不利益事実を告げようとしたにもかかわらず、消費者がこれを拒んだときは,消費者はその契約を取消すことができないこととしています。

2.「困惑」類型

(1)不退去

事業者に対し、消費者がその住居又はその業務を行っている場所から退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず,退去しないこと

例)訪問販売で,消費者が「帰ってください」といったにもかかわらず,販売員がしつこく居座ったので,仕方なく契約した。

(2)監禁

事業者が勧誘をしている場所から、消費者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず消費者を退去させないこと

例)営業所で長時間の勧誘を受け、帰りたいと言ったのに帰してくれないので,渋々契約した。

消費者契約法における「重要事項」(事業者の不実告知,不利益事実の不告知という行為の対象となる事項)とは、消費者契約の目的となるもの(物品,権利,役務その他)の内容(質,用途その他)や取引条件(対価その他)であって、かつ、消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすものをいいます。

 取消権は追認をすることができるときから6ケ月間行わないとき、あるいは、契約締結から5年を経過したときは時効により消滅します。(民法126条)

 「追認をすることができる時」とは、「誤認」類型は消費者が誤認したことに気づいたとき,「困惑」類型は消費者が困惑を脱したときです。

 契約が取消された場合には、その契約は初めから無効であったことになります。そして,「取消し」に関する民法の規定と「不当利得の法理」に基づき,当事者双方は,契約の関係に基づいてやりとりがなされたものについて相手方に返還する義務(原状回復義務)を負います。

 なお、返還されるべき「不当利得」の範囲は「その利益の存する限度において」とされれており、新築住宅の売買の場合,いったん消費者が居住し中古住宅となったため減少した価格分は含まれませんが,客観的な家賃相当額は返還すべきであるとされています。

 又,事業者から消費者に給付されたものが原物返還が不可能であるもの(役務など)である場合には,消費者は事業者に対して,その客観的価値を金銭で返還することになります。

媒介・代理と消費者契約法

1.媒介

事業者が第三者に対して消費者契約の締結の媒介を委託し,その委託を受けた第三者(受託者)が消費者に対して、前記Uで述べた不適切な勧誘行為を行った場合についても、やはり消費者はその契約を取り消すことができます。事業者から直接委託を受けた第三者から,更に委託を受けた者(二段階以上の多段階にわたる委託を受けた者を含む)が,不適切な勧誘行為を行った場合も,同様です。

2.代理

 消費者の代理人,事業者の代理人及び受託者などの代理人は,それぞれ消費者,事業者及び受託者などとみなされます。したがって,事業者の代理人が行った不適切な勧誘行為により,契約は取消すことができます。

消費者契約の契約条項に係わるトラブルの解決

 消費者が事業者と結んだ契約において,以下に挙げるような消費者の利益を不当に害する一定の条項が定められていた場合、その条項の全部又は一部が無効となります。

1.事業者の債務不履行による損害賠償責任を全部免除する条項

2.事業者の債務不履行による損害賠償責任を一部免除する条項

3.事業者の不法行為による損害賠償責任を全部免除する条項

4.事業者の不法行為による損害賠償責任を一部免除する条項

5.目的物に隠れた瑕疵がある場合に消費者に生じた損害の全部を免除する条項

  宅建業法の瑕疵担保責任にかかわる規定との関係

  宅建業法における,宅建業者自ら売主となる売買契約において,目的物の引渡の日から2年以上となる特約をする場合を除き,民法の規定により買主に不利となる特約を無効とする規定は,消費者契約法に優先して適用されます。

 住宅品質確保促進法との関係

 住宅の品質確保の促進等に関する法律は、新築住宅の基本構造部分について10年間瑕疵担保責任を負うこととし,これに反する特約は無効としています。これは消費者契約法の規定よりも厳しい責任を事業者に課す規定であり、消費者契約法に優先して適用されることとなります。

6.消費者の契約解除に伴う損害賠償額の予定のうち当該消費者に生ずる平均的な損害の額を超える部分

 宅建業法の損害賠償額の予定の制限との関係

 宅建業者売主の売買において,当事者の債務不履行を理由とする契約解除に伴う損害賠償額の予定を代金の2割以内と定める宅建業法の規定は,消費者契約法に優先し,有効です。

7.消費者が支払期日に遅れた場合,未払い額に課される金利のうち年14.6%を超える部分

8.民法の任意規定よりも、消費者の権利を制限し、義務を加重することによって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害する条項

他の法律との関係

 消費者契約法の規定と民法や商法の規定が競合する場合には、消費者契約法の規定が優先的に適用されます。

また、宅建業法など個別法の私的規定と消費者契約法の規定とが抵触する場合には、原則として業法など個別法の規定が優先的に適用されます。

事業者・消費者の努力義務

 事業者は契約内容の明確化,情報提供に努めるとともに、消費者は契約内容の理解に努めるものとします。

施行は平成13年4月1日から

 消費者契約法の施行日は平成13年4月1日。それ以降に締結された消費者契約について適用されます。

 平成13年4月1日以後に締結された消費者契約である限り,勧誘が平成13年3月31日以前に行われたとしても,同法の規定は適用されることとなります。