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相続税対策としての負担付贈与    

仮例  数年前不治の病であるガンを宣告されて、大手術の結果奇跡的に一命を取り止めたAさんはその後、病気のことに関しては人一倍神経を使い食べ物の摂取から生活習慣に至るまで並々ならぬ注意と用心深さを持ってここ数年を過ごしてまいりました。Aさんがかくも注意深く自分の健康に気を使うようになったのは人間誰しもが持つ死や病に対する恐怖のみならず、Aさんが都市近郊農家の市街地農地をたくさん所有している農家であったからです。そうなんです!莫大な額が予想される相続税に対する対策をこれまでほとんどしてこなかったため、もし今突然にでも自分が死んでしまったら取り残された遺族たちは課税される莫大な相続税に対してまさに右往左往、支離滅裂、混沌とした状況の中に放り出されてしまうからです。

 一命を取り止めたAさんはここ数年の間に自分が所有しているいくつかの土地に借入金で持ってアパートを数棟建設してみたり、バイパス沿いの土地には建設協力金方式で店舗を立て急ぎました。アパートのほうは自分名義で建てたものの、店舗については最愛の女房名義で建てたのです。店舗テナントから毎月数百万も入ってくるお金は女房名義の口座にきちんと振り込まれ、ここ数年で奥さんの預金口座には数千万円もの大金が積み立てられたのです。しかしながら自分の健康に不安を持つAさんは今のままでは自分の預貯金は増えないものの、自分の土地の上に建てられた建物の名義が奥さんのものであるため、土地の評価は自用地として更地評価され、また建設資金についても奥さんが借入者になっているがために相続財産の債務控除による圧縮効果が少ないことに気づき、このたび少々の出費を覚悟して建物の名義を自分名義にし、借入金の名義も自分に移し変える手続きを取りました。具体的には建物の贈与による所有権移転、テナントである債務者に対しての債権譲渡通知、借入金の債務者の債務者更改、建物賃貸借契約の変更契約書の書類などを長年自分の不動産の管理を依頼している不動産に関するレオナルド・ダビンチとしてオールマイティーを目指している業者のBさんに任せて、つい半年前賃借人であるテナントとの間ですべての書類のやり取りも完了しました。これらの手続きをしたために実に相続財産の評価額が数億円圧縮されたのです。これでほっとされたのかどうかわかりませんが、その半年後Aさんは一命を取り止めたあのガンが再発し、数ヶ月の闘病生活の果てにとうとう帰らぬ人となってしまいました。 合掌

 

負担付贈与:受贈者(財産をもらう人)に債務を負担させる贈与をいう。  

建物の名義変更

贈与による所有権移転 登録免許税 建物の固定資産評価額×2.5%

売買による所有権移転 登録免許税 建物の固定資産評価額×5%

錯誤による更正登記  登録免許税 不動産1個につき壱千円    

但、錯誤による更正登記が認められるためには更正前と更正後の登記に同一性がないと認められない。A名義をB名義にそっくり入替える事は認められない。AB名義をAC名義、A名義、    B名義またはBC名義にすることはOK。登記の前後に同一性が認められるため。   

財産評価  

建物名義が奥さんのままのとき

主人名義の土地の上に建っている建物が愛する奥さん名義のままであると土地の相続財産評価は自用地扱いされて100%更地評価されて圧縮効果はゼロ

          

建物名義が主人のものになったとき 

建物が贈与により土地の名義人である主人名義にされると土地は貸家建付地として扱われることになり,更地評価より20%程評価が減じられる。 

 

負担付贈与による贈与税額の計算 

負担付贈与があった場合は、贈与財産の価格から負担額を控除した価格を基として計算する。注意する点としては負担付贈与により取得した土地や建物などは、贈与税の計算上、相続税評価額で計算するのではなく,通常の取引価格(実勢価格)で評価するである。

 建物についてみると通常の取引価格は新築に要した金額から贈与の日までの減価償却費を控除した残存価格を通常の取引価格とみなす。  

 

例  

店舗の新築価格 10000万円 減価償却費 1000万円としたとき 

通常の取引価格= 店舗の新築価格10000万円−減価償却費1000万円

       = 9000万円

残存負担債務額を8000万円としたときの贈与税額

通常の取引価格−負担額−基礎控除額=課税価格

9000万円−8000万円−60万円=940万円

課税価格×税率−控除額=贈与税額

940万円×45%−140万円=283万円 

贈与税額283万

             

貸店舗の評価額 

建物の固定資産評価額を新築価格の約4割としたとき(減価償却分も含む) 

  4000万円×0.7=2800万円  借家権割合は30% 

 

貸家建付地の評価額=更地評価額×(1−借地権割合×借家権割合)

更地評価額  3億円  借地権割合 60%  借家権割合30% としたとき

貸家建付け地の評価額=30000万円×(1−0.6×0.3)

     =30000万円(1−0.18)

          =30000万円×0.82  

          =24600万円

 

更地評価額30000万円−貸家建付け地評価額24600万円=5400万円 

評価減▲5400万円

相続財産圧縮の効果

貸家建付地としての評価減  

▲5400万円 ―――@

負担債務額     

▲6200万円 ―――A @+A=▲11600万円

9000万円―2800万円=6200万円

結論 負担付贈与により妻名義の建物を主人名義に変えることにより贈与税283万の出費があるものの、財産評価が約12000万円減額し、相続税の税率が60%にもなるAさんにとってはかなりの相続税額の減額につながった。