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無権代理人を相続した場合の本人の地位は?条文の上をクリックすると根拠条文が見れます

 本人から何の権限も与えられていないのにあたかも与えられているかのように装って,土地の売買などの法律行為を行うことを無権代理行為とよび,代理人であるかのように行為した者を無権代理人とよびます。ではこの無権代理人が行った法律行為が本人に対してどのような効果を及ぼすかといえば、このような無権代理人による行為は本人に対して法律上の効果は及びません。

 ですから,例えば亡くなった父親である無権代理人が息子である本人の土地を売った場合には、本人は買主に対して所有権移転登記に応ずる必要はありません。しかし,本人が無権代理人の行為を追認することは自由です(民法116条)。

 無権代理人の勝手な行為に対して本人は原則的には何ら責任を負うことはありませんが,いかなる場合でも責任を負わないでいいかというと,少し掘り下げて考えてみますと民法第117条

1.代理人が代理権の存在を証明できないこと

2.本人の追認を得られないこと

3.相手方が代理権の欠缺を知らず,この知らないことに過失がないこと

という3つの要件を備える場合には,無権代理人は取引の相手方に対して,契約上の債務又は損害賠償の責任を負わなければならないと定めています。

 これらのことから結論として,無権代理人の法律行為の追認を本人が拒絶すれば,本人は買主に対して移転登記に応じる義務はなく,他方前記の3つの要件が備わっているときは、無権代理人を相続したとの地位からして,無権代理人としての責任,すなわち損害賠償責任を免れないということになります。