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媒介契約の際の広告費は請求可能?条文の上をクリックすると根拠条文が見れます

 不動産仲介契約は、契約類型としては、民事仲立契約と呼ばれるものです。民事仲立とは、他人間の商行為以外の法律行為の成立に向けて尽力する事実行為であり、他人間の商行為の成立を目的とする商事仲立と区別されます。民事仲立については明文の規定がなく、現在のところ学説・判例は、一般に民事仲立を準委任であると解しており、その法律関係は委任の規定が準用されるとされています。

 つまり、不動産仲介契約は依頼者の側から特別の理由なく解除できると考えられますが、これは委任の解除の自由を規定した民法651条の準用によるものです。民法648条3項は、委任が受任者の責に帰すべからざる理由によりその履行の半途において終了したときは受任者はその既に為した履行の割合に応じて報酬を請求することができると規定していますが、これを不動産仲介契約の中途解除にそのまま準用するのは不適当であると考えられています。

 又民法651条2項は、当事者の一方が相手方に不利な時期において委任を解除したときはその損害を賠償することを要すると規定していますが、不動産仲介契約が中途解約されたことにより本来生じたであろう報酬請求権を喪失したことが不利な時期ににおける解約であると解することはできないとされています。

 しかしながら、このような解除も信義則に反するような場合は制限を受けることになります。例えば、報酬支払を免れる目的で、仲介契約を解除した後、仲介人が紹介した相手方と直接取引を行ったような場合です。この場合には、不動産仲介契約を、売買契約成立を停止条件として仲介人に報酬請求権を発生させる契約であると構成し、直接取引を故意の条件成就妨害として民法130条を適用して仲介人の報酬請求権を認める説、業者のために不利な時期における委任の解除であるとして民法651条2項により業者の損害賠償請求を認める説、信義則や慣習を根拠として報酬請求権又は損害賠償請求権を認める説などがあります。

 ところで、仲介業務に伴う通常の広告費用は、仲介人が受領すべき報酬に含まれています。しかし、建設省告示1552号によれば、「依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額及び当該代理又は媒介に関わる課税資産の譲渡等につき課されるべき消費税に相当する額については、この限りでない」としており、判例においても「一般に宅建業者が土地建物の売買の媒介にあたって通常必要とされる程度の広告宣伝費用は、営業経費として報酬の範囲に含まれているものと解されるから、報酬告示が特に容認する広告の料金とは、大手新聞への広告の掲載料など報酬の範囲内で賄うことが相当でない多額の費用を要する特別の広告の料金を意味するものと解すべきである」としていることから、広告費用が依頼者からの特別の依頼によるものでない限りは解除にあたってその費用の請求はできません。