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◆法定相続 条文の上をクリックすると根拠条文が見れます

仮例  私の父は持病の高血圧が最近特に悪い数値を示し、最近は寝たり起きたりの生活が続きすっかり弱りはててしまい,時々ペンを握っては何やら紙に書いては破り,書いては破る姿を目にすることが多くなりました。つい先日も長男である私を枕もとに呼んで「自分が亡くなったときは」なんて,縁起でもないことを口にする始末です。

 そういう父の姿を見て私も相続についての勉強でもしなければならないと思い,本棚の奥にあった六法全書を取り出して調べようと思ったのはよいものの,学校を出てからは本といえば週刊誌ぐらいにしか目を通したことのない私にはよく分からないことが多すぎます。法定相続,指定相続,遺留分,遺産分割協議,特別受益者,相続放棄,限定承認,単純承認などなど言葉のひとつひとつは理解できないことはないのですが,それらの関係がどうなっているかということがはっきりと把握できません。まだ先の事と思っていても父がこういう状態ですので今のうちから「転ばぬ先の杖」ならぬ,いざというときに備えて予備知識を得ておきたいと思つています。

被相続人による相続人の相続分の指定が遺言によってないときは民法の規定に従う 

【法定相続分】民法第900条 

    配偶者と子のとき    配偶者2分のT  子2分のT

    配偶者と直系尊属のとき 配偶者3分の2  直系尊属3分のT    

    配偶者と兄弟姉妹のとき 配偶者4分の3  兄弟姉妹4分のT

【相続の順序】民法第900条  民法第887条  民法第889条

 1.子――2.直系尊属――3.兄弟姉妹 常にこの順序で先順位のものが相続人となる

 非嫡出子の相続分:法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた嫡出でない子の相続分は嫡出子の2分のT 民法第900条第4項 

養子の相続分:

養子縁組によって養子は養親の嫡出子と同じ地位を与えられ実子と同じ2分のT。また実方との血族関係が解消されることはない。ただし、特別養子縁組は実方との血族関係が解消される。

               民法第809条  民法第817条の9            

半血兄弟の相続分:父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹は双方を同じくするものの2分のT 民法第900条第4項 

 

「すべて甲を被相続人とした法定相続応用具体例」

1.甲と前妻丙との間に嫡出子Aがおり、後妻乙との間に嫡出子B及びCがいる場合の甲の死亡

甲の相続人となるのは,乙・A.B.Cである。その相続分は,それぞれ6分の3,6分の1,6分の1,6分の1である。前妻丙は離婚しているのであるから,相続権はない。前妻との間の子であるAは嫡出子であるから,後妻との間の子との間に相続分の差はない。

2.甲と妻乙との間に嫡出子A.Bがおり,甲は婚姻外で丙との間にCをもうけ,認知した場合。

甲の相続人となるのは,乙・A.B.Cである。その相続分は,それぞれ10分の5,10分の2,10分の2,10分の1である。丙に相続権がないのは当然のことであり,Cは非嫡出子であるから,その相続分は嫡出子A及びBの2分の1である。

3.甲と妻乙との間に嫡出子丙・丁がおり,丁は甲の死亡前に死亡した。丁には配偶者A、Aと    

  の間の嫡出子B及びCがいる場合。

甲の相続人となるのは,乙・丙・B・Cである。その相続分はそれぞれ8分の4,8分の2,8分の1,8分の1である。B及びCの相続分は丁が受けるべきであった相続分を分け合うことになる。(民法901-1

4.甲はAB夫婦間の養子であったが,甲の死亡前に養父Bは死亡しており,実親C及びDは生きている場合。なお、甲に直系卑属はいなく、乙と婚姻関係にある。

甲の相続人となるのは,乙・A.C.Dである。その相続分は,それぞれ9分の6,9分の1,9分の1,9分の1である。配偶者と直系尊属が相続人となる例であるので,その割合は,2:1である。甲の直系尊属は1親等の者が3名おり,それらの者の相続分は均等である。実方と養方で2分の1ずつにになるわけではない。したがって、A.C.Dは3分の1の相続分を3分の1ずつ承継するので,いずれの相続分も9分の1となる。

5.甲には直系の血族はいない。甲とA及びBとは父母を同じくする兄弟である場合。甲には配偶者がいる。

甲の相続人となるのは,乙・A.Bである。その相続分は,それぞれ8分の6,8分の1,8分の1である。配偶者と兄弟姉妹が相続人となる例であるので,その割合は,3:1である。甲の兄弟は2名おり,それらの者の相続分は均等である。したがって、AおよびBは4分の1の相続分を2分の1ずつ承継するので,いずれの相続分も8分の1となる。

6.Aは、甲の父母である丙・丁間の嫡出子であり,Bは丙の後妻である戊と丙との間の嫡出子である。甲には配偶者乙がいるが丙,丁、戊は死亡しており直系の血族はいない場合。

甲の相続人となるのは,乙・A.Bである。その相続分は,それぞれ12分の9,12分の2,12分の1である。配偶者と兄弟姉妹が相続人となるこのケースでは,その割合は,3:1である。甲の兄弟のうち,Aは、甲と父母双方を同じくする兄弟(全血兄弟)であるが、Bは甲と父のみを同じくする兄弟(半血兄弟)である。この場合,Bの相続分はAの相続分の2分の1となる。したがって、A及びBは4分の1の相続分を2:1で分け合うことになり,それぞれの相続分は12分の2,12分の1となる。