手持ちの不動産である土地の売却を思いついたら、まずは幾らぐらいで売れるものなのかと思いに至りますね。インターネットの発達した現代では売地の情報も様々なポータルサイトにたくさんの売地情報がHPに掲載されている為、誰でもすぐにアバウト的な相場観は把握できます。そして自分が所有している土地は大体幾らぐらいするかも簡単に把握することができます。しかし不動産というものは実に個性的なもので十人十色、道路に沿ったお隣の土地と自分の土地の価格が極端に違うということもよくあります。

それでは順を追って土地の価格を決める要因を説明していきます。

誰しも思いつくのは道路の幅員とか、どの方位に位置しているかなどでしょう。幅員や方位は土地の価格を決めるにあたって大変重要な要素です。しかし、土地の価格を決める要素にはその他にもたくさんあります。価格査定のプロである豊富な経験と知識を持った不動産業者は様々な要素を組み合わせてその土地の「売れるであろう」価格を出していきます。

一般的には
  1. 前面道路の方位
  2. 前面道路の幅員
  3. 前面道路の舗装状況
  4. 前面道路との高低差
  5. 前面道路の上下水道管の埋設状況
  6. 土地の日照や通風
  7. 土地面積の大小
  8. 土地の形の整形度
  9. 土地の間口の長さ
  10. 土地の路地上部分の有無
  11. 土地から小中学校までの距離
  12. 土地からスーパーや病院、最寄りの駅やバス停までの距離
  13. ハザードマップ上の川や崖地までの距離

等々が複雑に組み合わさってその土地の価格を形成していきます。ですから同じ地区内の土地であっても、ひとつひとつの要素を積み上げていくと一見似たような土地であっても最後は大きな価格の開きが生じることは特別珍しいことではありません。ではひとつひとつを精査していきましょう。

1.前面道路の方位

通常土地は道路に面しています。方位は東西南北のいずれかです。一番高い価格が付けられるのは南道路に面した土地です。南側が道路に面していれば良好な採光や風通しを確保でき、中でも南西角地や南東角地は特に人気の高い土地となります。

2.前面道路の幅員

通常、建物を建てるには敷地は4m幅以上の道路に間口が2m以上接していなければなりません。それは建築基準法で決められているからです。敷地が4mの道路に面しているというのは土地の価格を付けるにあたって最低の基準と思って下さい。最近の開発分譲地は既存の建物が建っている地域に比べると、殆どが5~6mの幅員を持った形になっています。その為、その地域の中では新しい開発分譲地が周辺の土地よりも高い価格で販売されていても売れ行きが好調なのはこの辺に原因があるものと思います。その他にも公道と云われるものに国県市町村道があります。土地の中には前面道路が幅数十メートルという広いバイパスや幹線道路に面した土地もあります。そういった土地は面積の大きい土地であったりすると、土地の価格も住宅用地で査定するよりも事業用向けの土地として高い価格を設定される可能性が大きく開けます。

3.前面道路の舗装状況

最近は住宅が建っている地域の殆どの前面道路が舗装されていると云ってもいいでしょう。都市計画区域から外れた余程の山奥でない限りはほとんどの地域で道路が舗装されています。

しかし舗装されている道路も様々で、簡易な舗装で舗装の程度が年数の経過等で劣化していたり定期的な舗装工事がなされて凹凸や亀裂等が殆どない立派な舗装道路もあります。

舗装道路の状況は接している土地の価格にも影響を与えます。

4.前面道路との高低差

土地の査定を頼まれるとすぐにゼンリン地図等で場所の特定を行いますが現地に行ってみると予想に反することが時々あります。紙資料は平面的なため、査定はやはり現地に出向かなければ正確な査定は行えません。

道路よりも高かったり、低かったりする土地は完成宅地にするために余分な工事をしなけれは゛ならない為にその分価格が落ちることになります。低い場合は盛土をして擁壁工事をしなければ完成宅地にはなりませんし、高い場合は土が周囲に流れ出さない為にブロックやL型コンクリート擁壁工事を施さなければ建築できる土地とは通常云えません。理想的な土地は排水などのことも考えて道路よりも30㎝程高い土地と云えましょう。

5.前面道路の上下水道管の埋設状況

都市計画による開発許可を受けて築造された不動産業者が売主になっている土地は各敷地内まで上下水道管が引込されているのが通常です。それに比べて個人が売主になって売っている土地の殆どが敷地内には上下水道管が引込されていないケースが多くみられます。その分安く設定されていれば問題ないのですが、前面道路に上下水道管が来ている場合でも敷地内に引き込む工事だけで結構な金額がかかるものです。なかには上下水道管が敷地から数十メートルも離れた場所にある場合などは軽く数百万円単位の引込工事がかかると予想できます。売りに出されている土地が仲介している不動産業者によって正しく把握されて価格に反映されていれば良いのですが、経験の浅い不動産業者によってその点を正しく反映されていない場合などは要注意の土地となります。

6.土地の日照や通風

土地の隣地である南側の土地に幅の広い大きな建物や高層マンションがデンと建っていたりすると、途端にアウトですね。1年365日の大半を隣地の建物の陰になって過ごすということを考えただけでも購入意欲が喪失してしまいます。鬱にもなりかねません。それほど日照というのは家を建てる人にとっては大切なことと思います。南側が隣地であったとしても高さ10m以下の一般的な2階建ての建物ならば冬至等の季節を除けば1日の大半は健康に必要な日照は確保できるものと思います。

その土地の価格査定から見た場合は、南側が隣地としてあるよりも道路が南側に面している所謂南面道路に面した土地が一般的には人気があり、価格もその分高い価格で査定されることになります。

7.土地面積の大小

戸建を建てる方の年齢は住宅ローンの年齢制限もあり、大半が30代前半から40代前半に集中しています。建物の面積も核家族化している現代では家族3~4人向けの間取りに応じたものが大半の為、広すぎる土地や逆に狭すぎる土地も買い手が付きにくい土地となります。よく売れる開発された分譲宅地を見ればお解かりのように適度な広さの土地が一番売れています。50~60坪前後の広さでしょうか。

8.土地の形の整形度

整形地といわれる土地は長方形や正方形の土地のことを云います。台形や菱形、三角形やウナギの寝床的な極端に細長い土地等は、土地の広さを有効に活用できない部分が多く多くの方から敬遠されがちです。

建物間取りを実際にプランニングしてみると、整形地と云われる土地は建物の建つ部分と庭や駐車場等に使われる部分のバランスが上手く取れますが、整形地でない土地は思うような間取りがなかなか取れず、限られた範囲の間取りしか取れないことが良くあります。

多くの区画がある開発分譲地等を見れば整形地の方からどんどん売れていきますが、いびつな形をした非整形地は価格も安くなかなか売れていないのをよく見かけます。整形地であれば一段と需要が高い土地とみなされます。

9.土地の間口の長さ

建物が建つ土地とは建築基準法第43条の定めにより、間口が道路に2m以上接していなければならないことになっています。ですから道路に接する土地の間口が2mに少しでも足りない場合は建築ができない土地として見做され、まったく需要がない土地と云ってもいいでしょう。売れる価格も付けようがない土地といってもいい土地です。

需要の多い地方の住宅地に適する地域内に在る60坪前後の土地であれば建てられる建物の一般的な大きさからみて間口は最低でも10m程は必要と考えます。都会と地方では地価の高さの違いがあって、もっと狭い間口の土地でも都会では妥当な価格で売れていると思います。標準的な家族構成に合わせた建物プラン集等から人気のある間取り図プランが当てはまる土地は人気があります。

10.土地の路地上部分の有無

やや広めの土地を分割した時に生ずる奥の土地の接道する箇所の部分を路地上部分又は旗竿部分とも云います。図示すれば旗の竿の部分に似ていることからこのような呼び方をしています。この旗竿の部分が道路に2m接していると基本的には、敷地は建築が許可されることになります。旗竿の部分が幅4m程あれば車を縦列に並べて駐車場として有効に使えることになります。幅が2mそこそこだと人や自転車等は問題なく通れるのですが、現代のクルマ社会ではこういう土地は敬遠されることになります。

路地状部分のある土地や旗竿地と云われる土地は開発分譲地内にはあまり見かけませんが、個人の方が切り売りしている土地ではよく見かけます。正方形や長方形などの代表的な整形地に比べると需要があまりありません。こういう土地を売却するときには旗竿部分の幅を広げることが可能であれば最低でも4m近くは確保しておきたいものです。

11.土地から小中学校までの距離

学校までの距離も土地の売れ行きに影響を及ぼします。中学校は距離があると自転車通学が認められるため少々、土地が離れていても大きな影響はありませんが、小学校までの距離があり過ぎると売れ行きに大きな影響を及ぼします。

一般的には該当土地と小学校までの距離が4kmを超えると校区が変わるようです。緩衝地区制度を設けている市町村であれば校区の選択をすることもできますが、どこの市町村も厳格に線引きをしているのが実情のようです。

大人の足では1分間に80m歩くものと計算されますが、小学校の低学年あたりではその半分から3分の2あたりで計算するのが妥当と考えられます。ですから最大4kmほど小学校から離れたところにある土地から学校に通うのには、小さな子供の足では毎日片道1時間半程もかかることになります。子供の体を鍛える意味で毎日、長時間歩いたほうが体の為にいいと思う親もいるかもしれませんが、子供の身になって考えるとそうもいかないとも思えます。

新しく開発される分譲地などで学校のそばにある土地はいつも売れ行きがいいものです。売ろうとしている土地と学校との距離が近いか遠いかは売れ行きに大きな影響を与えます。

12.土地からスーパーや病院、最寄りの駅やバス停までの距離

学校までの距離以外にも、土地の価格に影響を及ぼすものにスーパーやコンビニ、病院、JRの駅やバス停のことがあります。所謂、生活利便性に富んでいるかそうでないかということです。生活をしていくうえで必要な店舗や施設が近くにあるということは生活のし易さに直結するものです。生活がしやすい場所にあるということはそのまま利便性に繋がります。地域の人口密度も高くなっている地域は高層の賃貸マンションだけでなく、分譲マンション等も進出してきます。

ご自分の土地がこういう地域にあるのか、そうでないのかは土地の価格に大きな影響を及ぼします。全国どの地域でも云えることですが、ここ熊本でも殆どの地域が毎年の人口減少に頭を抱えています。しかしいくつかの地域では減るどころか漸増している市町もあります。毎年、開発される土地がたくさん出てくる地域です。不動産だけに限ってみるとデフレとは関係なくインフレが局地的に進んでいる地域です。

土地の査定をするにあたってはこれらの項目も影響を与えます。ご自分の不動産がこういう地域に在ればプラス項目として引っ張り上げられますが、その他の多くの項目がマイナス面が多くある不動産であればそれほど大きな影響はないものと思われます。

13.ハザードマップ上の川や崖地までの距離

最後にハザードマップと不動産の関係について少し説明させて戴きます。

インターネットが普及してから全国どこの市町村でもご自分の街のホームページにハザードマップが掲載されるようになりました。ハザードマップを見たうえで不動産を見る!

これは土地探しの鉄則と云えます。地球温暖化の影響でしょうか、毎年のように全国のどこかで「これまで経験したことのない大雨」が降り、大きな災害が起きています。予測不可能な突発的な地震や津波等による大災害は今の科学の力でも防ぎようのない事実ですが、いくら激しい雨が降っても安全な地域かそうでない地域は区別がつくものです。

であれば自分の土地が安全な地域にある土地であるかどうかぐらいは把握しておきたいものです。

結論として云えることは●大きな川の近くにある土地●崖地の上や下にある土地は要注意です。まだ現在の都市計画法ではこういう土地に該当することがあっても建築許可が下りている事実もあるようですが、これから先は大きな制約が課せられてくることも十分に考えられます。

川や崖等が近くにある土地の査定というものは大変に難しい部分があります。建築許可が下りないことがはっきりと定められている土地ならば査定不能ということになるのでしょうが、近隣には新旧たくさんの建物が建っていて一見すると何の問題もない不動産のように見えていて、よくよく調査してみると大切な問題が見えてくるこのような不動産の査定は大変難しい部分があります。


以上、不動産の査定をするにあたってどれもこれも重要なことばかりを書き連ねてみました。どの不動産にも相場というものがあります、後はその不動産の持つそれぞれの特徴をかみ合わせての価格を打ち出していきます。査定を考えられている方や、現在の査定に納得感がない方などどうぞ弊社にまでお気軽にコンタクトして下さい!